福井県内唯一の婦人保護施設「若草寮」=福井市内

 DV(ドメスティック・バイオレンス)の被害者や貧困の女性を無料で長期間受け入れる「婦人保護施設」。福井県内で2011〜15年度の入所者は毎年0〜3人にとどまっている。県の機関に寄せられるDV相談は年間千件を超えており、支援団体は「中長期的な支援が必要な人は少なくないが、利用に結びついていない」と指摘している。

 県内唯一の婦人保護施設「若草寮」(福井市、定員15人)は、数カ月単位で入所者を受け入れ、職員が一緒になって仕事や住居を探したり、生活保護の申請を手助けしたりしている。子どもと一緒に入所でき、外出も原則自由で仕事や通学が続けられる。

 県総合福祉相談所をはじめ、県生活学習館や各健康福祉センターに設置する配偶者暴力相談支援センターへのDV相談は、15年度で1250件に上る。婦人保護施設の入所は、原則2週間程度の一時保護からの移行がほとんど。県内では11〜15年度に年間30人前後が一時保護を受け、DV被害者が大部分を占める。

 同相談所の白崎俊一郎次長は「DV被害者には軽度の精神・知的障害のある人が少なくない。身寄りがなく、生活保護の申請や支援機関の調整など自立支援に時間がかかる人もいる」と婦人保護施設の必要性を強調する。

 入所者の少なさに関して、白崎次長は「他県では2週間を過ぎれば自動的に婦人保護施設に移すところもあるが、福井では1カ月を超えて一時保護する場合もある」と説明。施設内で携帯電話が自由に使えないなどの制約から入所を敬遠する人もいる。「一時保護後に入所するかどうかは本人の希望による。近年は実家などに帰郷したり、自分でアパートを借りたりする人が多い」とも語る。

 婦人保護施設の利用が少ない状況は各地でみられ、福井県をはじめ10県で15年度の入所者が0〜1人だった。一方、宮城や香川など6県6施設は21人以上を受け入れ、5施設ある東京都は計80人、2施設ある大阪府も計158人に上るなど地域差が大きい。

 民間でDVや性暴力の被害者のシェルター(緊急避難所)を運営するNPO法人福井女性フォーラム(福井市)の田中和代理事長は「心身状態や生活環境に難しい問題を抱える人ほど長い目で見る必要がある。シェルターから行き場がない人に婦人保護施設を紹介したいが、一般にほとんど知られておらず、入所条件や空き状況の情報がほとんどない」と話す。

 同NPOのシェルターの入所者には、同伴の子どもを含めて外出が厳しく制限されるために公的な一時保護を敬遠した人もいる。「現状では行政の一時保護を受けなければ、婦人保護施設の入所につながらない。支援を求める人が利用しやすいよう、条件整備をしてほしい」と訴えた。

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 ■婦人保護施設

 生活困難を抱える女性を無料で受け入れ、精神的なケアや自立支援をする施設。1956年の売春防止法制定に伴い、売春経験者の保護などを目的に設置されたが、その後ドメスティックバイオレンス(DV)被害者、生活困窮者らへ対象が広がった。39都道府県に48カ所あり、東京や大阪などには複数の施設がある。婦人保護施設はないが、支援団体への補助金や「ステップハウス」という生活訓練施設など、独自支援策を実施する鳥取、島根両県などもある。

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