「多様な薬の登場で、糖尿病患者の病態や生活に合わせてより安全で十分に血糖コントロールが実現できる環境が整いつつある」と語る番度内科部長=福井市の県済生会病院

 糖尿病の多くを占める2型糖尿病は、高齢患者が増加する一方、働き盛りの40〜50代での発症も少なくない。糖尿病の治療は食事・運動療法が中心だが、薬物療法を進める場合、飲み忘れや服薬中断を防ぐために無理なく続けられるものを選択することが大切だ。近年は1日1回から週1回のものまでさまざまな治療薬が登場しており、県内の専門医は「患者、医師両サイドから見て選択肢は格段に広がった。病態や生活に合わせて選べる医療環境が整いつつある」とする。

 ▼飲み忘れ防ぎたい

 糖尿病が強く疑われる人は全国で約950万人、糖尿病の可能性を否定できない人は約1100万人いると推計されている。厚労省の2015年人口動態統計月報年計によると、人口10万人に対する本県の糖尿病死亡率は13・5人(平均10・6人)で、全国でワースト10位にある。

 経口血糖降下薬は、服用タイミングや回数が決められているものが多く、欠食や外食など食事時間が不規則な生活を送る人は飲み忘れの恐れがある。特に忙しく働いている人や育児中の人などは生活リズムを一定にするのは難しく、処方された薬や注射薬が正しく使われない「残薬」問題が深刻化している。

 また、服薬を途中でやめてしまう患者も少なからずいる。福井市の県済生会病院内科部長で県糖尿病対策推進会議理事の番度行弘医師によると▽多忙なため受診を怠る▽医師と患者間の信頼関係が不十分▽精神神経性疾患を併発し、治療意欲をなくす▽コスト面で通院・服薬が困難となる−などのケースがあるという。

 ▼服薬アドヒアランス

 きちんと薬を服用するためには、患者が薬の意義を理解し、主体的に治療方針の決定に参加して服薬を継続する「服薬アドヒアランス」の向上が大切とされる。北里大学病院薬剤部長らの調査によると、糖尿病患者のうち「薬物療法を行っておらず、フルタイムで仕事している65歳未満」の約7割が「週1回の服薬を好む」と回答。服薬管理のしやすさを望む声が強い。

 こうした中、経口血糖降下薬の一つで、膵臓(すいぞう)のインスリン分泌を促進し血糖値を下げる「DPP—4阻害薬」に、週1回の投与で1日1回の投与と同程度の効果が持続する新薬が登場した。副作用が少なく価格も比較的割安で、今後さらに使用が拡大するとみられており、県内医療機関でも使用が広まっている。

 また、1日1回服用し、血中の糖を尿として排泄(はいせつ)することを促進させる「SGLT2阻害薬」や、週1回投与でインスリンに匹敵する血糖低下作用を示す「GLP—1受容体作動薬」も注目を集める。扱い方が簡便な新しい持効型インスリン製剤もある。

 番度医師は「30年前と比べると、糖尿病治療薬の選択肢は革新的な広がりを見せている。患者それぞれの病態や生活に合わせて薬を使い分けることにより、患者の満足度を担保しつつ、より安全かつ十分な血糖コントロールを実現できる医療環境が整いつつある」と話している。

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