福井県越前市で2カ所目となった「みんなの食堂」。県内の食堂では子どもが悩みを打ち明け始めている=11月16日、越前市向陽町

 子どもらに無料で食事を提供する「子ども食堂」が福井県内で始まってから1年余り。子どもたちが悩みを打ち明け始めている。そこからは、複雑な家庭環境や苦しい学校生活、貧困といったさまざまな課題が垣間見え、運営スタッフは「どこまで踏み込んで支援すべきなのか」と頭を悩ませている。「問題を発見したら抱え込まずに、とにかく専門機関につなぐことが重要」との指摘もある。

  ■手作りタルト■

 子どもやお年寄りが集う「みんなの食堂」が開かれている越前市の野尻医院。4月のオープン時、子どもは小中学生8人だったが、今では20人を超えることもある。

 ここには、市内の児童養護施設「一陽」の子どもも、職員と一緒にやって来る。最初は職員にくっついて動いていたが、今では子どもだけで遊ぶようになった。不登校の子ども同士が学校に行かない理由を打ち明け合ったり、「(学校に)行ってみよっか」と励まし合ったりする光景も見られる。

 「僕の名前分かるか?」と、スタッフに何度も聞く子どももいる。食堂を運営する実行委員会の一人、野尻富美さん(48)は「名前を呼ぶと、うれしそうな顔になる。『大人が自分を認めてくれている』ということを確認しているようだ」。11月に2カ所目をオープンしたときは、常連の女子中学生が、お祝いにと手作りのチキンタルトを持ってきた。

  ■病院に行かず■

 「子どもとの距離が縮まるほど、問題が見えてくる」。食堂を運営する複数の関係者は口をそろえる。

 あるスタッフは、食事の前に、トイレで子どもの下着の着替えを手伝っているとき、足に化膿(かのう)しかけた大きな傷があるのを見つけた。そのとき初めて子どもは「足が痛い」と打ち明けた。

 傷は数日前、遊んだときにできたものだったが、子どもには病院に行くという発想がなく、親もいずれ治ると思い込んでいたという。スタッフは「子どもを通して見える問題は、貧困だけでなく、さまざまな家庭環境が絡んでいる」と話す。

  ■携帯でSOS■

 「学校に行きたくない」「おなかがすいた」—。スタッフには、食堂のオープン日と関係なく、子どもから携帯メールなどで連絡が入ることがある。ある食堂のスタッフは、おにぎりを持って親が出払っている子どもの家へ向かった。

 敦賀市で昨年9月から子ども食堂を開いている中村幸恵さん(50)は「食を提供するだけでなく、子どもたちが今後どうすれば社会で自立できるのか、ということを考えるようになった」。おなかがすいたからといってその都度、食事を与え、寂しいからといって一緒に遊んでしまえば、その子の家庭は何も変わらないのではないか、と自問自答する関係者は多い。

 一陽の橋本達昌統括所長(49)は「何か不安を感じたり問題を見つけたりしたら、抱え込まずに専門機関に連絡することが大事。それが地域で子どもを育てることにつながる」と指摘する。

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