自己肯定感が低いと、失敗や挫折にも弱くなってしまい、それが悪循環を生んでしまうことも…

 「自分が嫌い」「自分はダメ人間だ」と、必要以上に自分の価値を低く見積もってしまい、どうしても自信を持てない人がいます。

 こうした人を心理学の言葉では「自己肯定感が低い人」といいますが、心の健康のためには、自己肯定感が欠かせません。自分なんかダメだと思ってしまうと、心の免疫力が大きく下がってしまうのです。

 こうした心の問題に取り組むのが、NYの人気セラピストであるガイ・ウィンチです。彼のTEDトーク「感情にも応急手当が必要な理由」は 400万回以上視聴され、「2015年で最も人気のトーク」にランクインしました。

 日本に上陸した彼の著書『NYの人気セラピストが教える 自分で心を手当てする方法』の中から、今回は“自分を嫌いになってしまったとき”の症状とその応急処置法をお伝えします。

 ■自己肯定感は高すぎても低すぎてもいけない

 自己肯定感というものはつねに揺れ動いているため、いやなことがあったときなど一時的に下がることもあります。このようなことは誰にでもあることで、とくに手当てをする必要はないでしょう。

 しかし、自己肯定感の低い状態が長く続いたり、そのせいで周囲の人との関係がいびつになっている場合は、きちんと傷を手当てして自己肯定感を高める必要があります。

 なぜならば、自己肯定感が低いときは、心の免疫力が大きく下がっており、ちょっとしたことでも傷つきやすくなるからです。憂うつや不安が高まり、過食症や拒食症になる危険もあります。さらには人間関係の満足度が下がることもわかっています。

 一方、自己肯定感を高めれば、心の免疫力が強化されて多少のことではへこたれなくなります。

 ただし、自己肯定感を高めることとは、自分大好き人間になることではありません。世の中には自分が大好きで自信に満ちあふれた人もいますが、それはそれで困った面があります。その極端なケースがナルシストです。ナルシストの人は自己愛が異常に強く、ちょっとでも批判的なことを言われるとひどく怒り、全力で相手に報復します。自分の肥大化した自己を守るためなら手段を選びません。

 自己愛は高すぎても低すぎてもいけないのです。自分をしっかりと肯定しながら、自己愛におぼれない堅実さを保つことが理想的です。

 自己肯定感の低い人は、「自分は魅力のない人間だ」と思っています。しかし、メークやアクセサリーなしの素顔の写真を比較したところ、自己肯定感の高い人と低い人で外見の魅力に差がないことがあきらかになったという研究結果があるのです。つまり、自己肯定感の低い人も、純粋な顔の造りで見ればとくに劣っているわけではなく、思い込みの場合も多いということです。

 それでは、以下に「自己肯定感が低い」人の特徴的な症状を3つ挙げてみましょう。これらに当てはまっていれば、あなたは「自己肯定感が低い」傾向にあるかもしれません。

 ■「自己肯定感が低い」人の特徴的な3つの症状

 ▽心が傷つきやすくなる

 まず、自己肯定感が低いときの一つ目の症状として、「ささいなことでも傷つきやすくなる」ことが挙げられます。メールの返信がこなかったり、プレゼンで失敗したりしただけで、心のバリアが破られてぐさりと傷を負ってしまうのです。

 しかし、自分に自信があるときには、少々いやなことがあってもそれほど傷つきません。多くの研究でもこのことが証明されています。

 拒絶されたときの対処のしかたにも差があります。ふたたび拒絶されるのが怖くて、他人とのあいだに距離を置き、自分の世界にこもりがちになってしまうのです。

 

 失敗や挫折にも弱くなり、ふたたび挑戦する勇気がなくなって、自信喪失や無気力にも陥ります。ストレスを引き起こす出来事があったときには、必要以上に深刻に受け止めがちです。自己肯定感の低い人はストレスホルモンであるコルチゾールの血中濃度が高いという結果も出ています。

 そしてストレスが高まっている状態ではいつもよりミスや失敗をしやすくなるので、さらに自己評価が低くなるという悪循環に陥ってしまうのです。

 ▽ポジティブな情報を受け入れられなくなる

 自己肯定感が下がっているときの問題の2つめの症状は、「ポジティブな情報を受け入れられなくなる」ことです。

 自分なんかダメだと思っている人は、他人にほめられても素直に信じられません。人にほめられると「自分はそんなんじゃない、ダメな人間なのに!」と感じ、怖くなって逃げてしまいます。そして、知らず知らずのうちにダメ人間をアピールするような行動を取り、その結果として嫌われたせいで「やっぱり自分はダメなんだ」という確信がさらに深まります。

 また、楽しむチャンスがあっても、そこに手を伸ばそうとしません。パーティや遊びなどの誘いも「そんな気になれない」と参加を見送ってしまいます。

 そのように自分がもっとも必要としているポジティブな情報や体験をわざわざ遠ざけるため、自己評価や気分がよけいに下がり、心の免疫力がますます弱ってしまいます。

 ▽いやなことを必要以上に我慢する

 そして、3つめの症状は、「いやなことを必要以上に我慢する」こと。

 自己肯定感の低い人は、一方的に損をする人間関係であっても、そこから逃げ出すことができません。相手にノーを言うなど自分の考えを主張できず、当たり前の要望さえ伝えられずにぐっとのみ込みます。

 たとえ人から不当な扱いを受けていても、それに立ち向かうことなど無理だと思い込み、嫌な相手を避けることも不可能だと思ってしまいます。「友達がいないよりましだから」「自分なんかとつきあってくれるだけでもありがたい」と考え、わざわざいやな思いをするために友達に会いに行くのです。

 そんな自己肯定感の低い人を不当に扱う人が、特別な悪人かというとそうとも限りません。人というものは必要以上の努力をしないものですから、相手を雑に扱っても許されるなら、つい行動が雑になります。おカネを返さなくても怒られないなら、つい返すのを忘れます。一方的に尽くしてくれる人と付き合っていると、尽くされて当然のような気になってくるのです。

 このように、相手に何も要求できない人は、一方的に不利な立場に置かれがちです。相手に尊重してもらうためには、「尊重してほしい」と伝える必要があるのです。

 ■自分にやさしくしたほうが、ものごともうまくいく

 それでは、 こうした状況にどう対処したらいいでしょうか。いくつかやり方はありますが、今回はその中から、入口の「手当てA(自分にやさしい言葉をかける)」をご紹介します。

 「自分にやさしい言葉をかける」ことは、自己肯定感の低い人にとても必要なことです。

 たとえば学校の成績のことで「お前はバカだ」「ダメな人間だ」とひどい言葉で子どもを罵倒している親を見たら、誰でも見ているだけでつらい気持ちになるでしょう。これは精神的な虐待ですが、自己肯定感が低いとき、私たちは自分自身に対してその親と同じことをしています。自分の失敗や欠点を執拗に批判し、自分をこてんぱんに痛めつけるのです。

 頭では自分をもっと大切に扱うべきだとわかっていても気持ちがついていきません。また、自分を甘やかしたらよけいにダメになるという気持ちもあります。

 しかし実際は逆で、さまざまな研究により、自分にやさしくしたほうが心の免疫力が高まり、ものごとがうまくいくことは明らかになっているのです。

 それでは、自分にやさしくする具体的なエクササイズをご紹介しましょう。

 ■自分にやさしくするエクササイズ

 1. 失敗したり恥をかいたりして、自分がいやになった経験をひとつ思い出してください。なるべく最近の出来事のほうが効果的です。そのとき何が起こったから、それについてどう感じたかを詳しく書いてみましょう。

 2. 今度はそのできごとが、あなたではなく友人や仲のいい家族に起こったと仮定します。その人が嫌な出来事に直面した様子を想像し、そのとき彼/彼女がどう感じたかを書いてみてください。

 3. その人の心の苦痛を取り除くために、やさしく励ますような手紙を書いてあげましょう。つらい経験をしたことに理解を示し、その人の気持ちを受け入れたうえで、自分を責める必要はないということを伝えてください。

 4. もう一度自分の経験と感じたことについて書いてみましょう。ただし、今回はなるべく公平に、客観的に記述します。ネガティブな憶測や批判を避けて、たしかな事実だけを書いてください。

 たとえば、恋人がメールの返信をくれなかったのは事実かもしれませんが、恋人があなたを嫌っているというのはただの憶測です。プレゼンでミスをしたとしても、同僚に軽蔑されたというのはただの憶測です。自己肯定感が低いときには、人の表情や反応が必要以上にネガティブに感じられるものなのです。

 この「手当てA」を、1日に1回ずつ、3日間にわたって実行してみてください。頭の中の批判的な声がやさしい励ましに置き換わるまで、そのサイクルを繰り返してみましょう。そのうち、ポジティブな言葉を受け入れやすくなると思います。

 自己肯定感を高めるには、時間がかかります。じっくりと、焦らずに実行してみてください。

 これらをいくらやっても効果が上がらないときや、なかなか実行できないときには、医師やカウンセラーへの相談も検討してみてください。しかし、適切な応急処置を知り、日々心をメンテナンスしていれば、心の傷の悪化を防ぐことができるでしょう。ぜひ、試してみてください。(ガイ・ウィンチ:心理学者)

 (構成:山岸美夕紀)

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