ネット上の個人情報について意見を交わす生徒たち=30日、福井県高浜町高浜中

 環境権やプライバシー権、インターネット上に残り続ける個人情報の削除を求める「忘れられる権利」—。パソコンやスマートフォンの普及などを背景に社会が急激に変化する中、「新しい人権」とその課題について、子どもたちに考えを深めさせることは各学校の大きなテーマ。4〜10日の人権週間に合わせ、福井県内NIE(教育に新聞を)実践指定校の人権教育の取り組みを紹介する。

 福井市松本小の6年生は9月、道徳の授業で、性同一性障害や同性愛などの性的少数者を指す「LGBT」を題材に、偏見や差別について考えた。まず、言葉の意味やLGBTの人の普段の生活について新聞記事などを使って学習。この後、リオデジャネイロ五輪の陸上女子800メートルで、体格や低い声から性別を疑われる中、金メダルを獲得した南アフリカのキャスター・セメンヤ選手の記事を取り上げた。

 浅井綾子教諭(33)が、他の女子選手と体つきの違うセメンヤさんが走る写真を見せると、児童から「男の人が走っているみたい」との声が漏れた。児童たちは、心ない中傷でセメンヤさんが心を痛めたとの記事を読み、友達の立場になって手紙を書いた。

 「一つ一つ一緒に誤解を解いていこう。僕も手伝うよ」「笑う人がいても、その数ほど理解してくれる人がいます」「人の言っていることは気にせず自信をもって走って」。手紙には、悩んでいる人を思いやる言葉が並んだ。

 「メダルは私を○○してくれる人に捧(ささ)げる」と、新聞の見出しの一部を隠して空欄を埋めさせる質問には、「応援してくれる人」「信じてくれる人」などの答え。LGBTについても「理解」してくれる人の存在が支えになることを考えさせた。

 浅井教諭は「現在の学校教育はLGBTに関する知識や多様な性のあり方については、あまり触れていない」と話す。「教科書の一歩先を行く新聞は、社会の今の問題を学べる。新聞の写真や見出しには読者に伝えたいことが凝縮されていて、子どもたちの理解の助けになったと思う」と授業を振り返った。

 高浜中でこのほど行われた3年社会の授業。竹原永治教諭(39)が「新しい人権」の単元で活用したのは、インターネットの普及によって、表現の自由とプライバシー権のバランスに課題があることを指摘した記事だ。

 竹原教諭は、コンビニエンスストアのアイスケースに店員が入った写真をSNS上に投稿し「炎上」した数年前の事例を挙げ、現在でもネットで検索すると簡単にこの写真を閲覧できることを紹介。「ネット上の記事の削除に賛成? 反対?」と生徒に問いかけ「忘れられる権利」について考えさせた。

 「反省したら消すべき」「プライバシーを優先すべき」「重い責任から逃れてはダメ」「知る権利を守るべき」。生徒は頭を悩ませ、グループでの議論は白熱した。

 「今、実際に世の中で起こっていることを勉強できるのは新聞ならでは」と竹原教諭。グループ討議は普段以上に盛り上がったと言い「現実的な問題に触れ、対話的な深い学びにつながった」と手応えを得た様子だった。

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