福井県警のドライブレコーダー検査で記録された、交差点で車に衝突する寸前の映像。赤信号を無視して交差点に進入し人身事故となった=福井県鯖江市内

 11月に福井県おおい町の舞鶴若狭自動車道で逆走した79歳男性が死亡するなど、県内でも高齢者が絡む事故が相次いでいる。県警が高齢者の車にドライブレコーダーを搭載させた検査では、危険な運転の実態が浮き彫りとなった。高齢者の運転に警鐘を鳴らす声がある一方、免許返納をかたくなに拒む高齢者も目立つのが現状だ。

 社会の高齢化を背景に増え続ける高齢ドライバー。県運転者教育センターによると、県内の免許保有者のうち65歳以上の高齢者は13万1702人で全体の24%を占める。10年前に比べ5万人以上増え、比率もほぼ倍増。今年10月までに県内で発生した人身事故は1481件で、そのうち357件は65歳以上の運転手が過失の重い第1当事者となっている。

 75歳以上で免許を更新する人は、警察の認知機能検査を受けなければならない。検査は、認知症の恐れがある(1分類)、認知機能が低下している恐れがある(2分類)、低下している恐れがない(3分類)の三つに分類される。県内では昨年、検査を受けた1万3388人のうち、456人を1分類と判定。2分類は4141人に上った。

 1分類とされ交通違反があった場合、医師の診断が必要となり、認知症と診断されれば免許取り消しか停止になる。ただ違反がなければ医師の診断を受けず素通りとなる可能性もある。このため来年3月に施行される改正道路交通法では、1分類の高齢者は必ず医師の診察を受けなければならないようにした。また75歳以上が交通違反をした場合、臨時の認知症検査が義務付けられた。

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 認知症研究を専門とする濱野忠則福井大准教授は「以前は認知症患者から免許を取り上げると、症状が悪化する心配があり躊躇があったが、もはやそんな状況ではない」と話す。

 特に注意が必要なのが前頭側頭型認知症という。交通ルールを守ろうとせず、信号無視や逆走など大きな事故につながる行為をしやすい。アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症も、運転技能の低下、記憶障害などが起こる。

 認知症でなくとも高齢になれば認知機能が低下し、視力や運動能力も衰える。認識できる視野が狭くなるため、相手が急に飛び出してきたように感じてしまう。「自分は大丈夫」と自身の経験による過信や慢心から事故につながるケースもある。

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 県警は昨夏から、高齢者の自家用車にドライブレコーダーを付け、録画した映像を基に運転技術を検証する検査事業を実施。この結果、高齢ドライバーの危険性が浮き彫りとなった。

 10月末までに60〜90代の412人が受けた。映像には一時不停止や、中央線をまたいで走るといった危険な運転が記録されるなど、問題点の多い高齢者が多かった。中には信号無視で車と衝突、人身事故となった例もあった。

 県警では自主返納を勧めているが、代替の公共交通機関が乏しい県内の状況もあり、一筋縄ではいかないのが現状だ。濱野准教授によると「畑に行きたい」「妻を病院に連れて行くため」と本人が納得しないことがほとんど。少し車をこすったぐらいでは免許返納を考えず、事故を起こしやっと踏み切るケースが多いという。

 1日にも同県坂井市で90代男性の車が衝突して2人が死亡する事故があった。濱野准教授は、自動運転技術の進歩に期待する一方、待ったなしの現状に「衰えを自覚し、免許を返納すべきか賢明な判断をすることが重要」と強調した。

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