飛騨古川の町並みや農村風景を巡る「里山サイクリング」に参加した外国人ら=10月20日、岐阜県飛騨市

 岐阜県飛騨市の飛騨古川エリア。カラフルなレンタル自転車に乗った外国人の一行が日本人のガイドを先頭に、出格子の商家などが連なる通りや、のどかな農道を走り抜けていく。黄金色に実った水田の脇に自転車を止め、風に揺れる稲穂にカメラを向ける。

 「クールな田舎をプロデュースする」を企業理念に掲げ、2007年に設立した地元の株式会社「美ら地球(ちゅらぼし)」が、毎日実施している散策ツアー「里山エクスペリエンス」。参加者の約7割は訪日外国人観光客という。

 10月下旬にはカナダ、オーストラリア、オランダから計5人が約17キロ、3時間半のツアーに参加していた。エゴマ畑でカナダ人女性のブライナ・ハリスさん(62)が「こんな美しい日本の景色が見たかった。本当に来てよかった」と、ガイドを介して収穫中の女性に話し掛けた。この女性は「いつもいると、その良さは分からないけどねー」とほほえんだ。

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 1年目に年間約150人だったツアー参加者は昨年は3千人を超えた。地域の人たちは最初、「田んぼなんてどこにでもある」とツアーの趣旨に懐疑的だったという。同社スタッフが地道にコミュニケーションを重ねて協力依頼をするうちに、今では畑の野菜をツアー参加者に振る舞うほどになった。

 コース上で立ち寄るポイントは、地域の暮らしを感じられる場所かどうか。同社マネージャーでガイドも務める白石達史さん(33)=千葉県出身=は「田畑や古民家といった地域の人が特に価値がないと思っていた場所でも『美しい、すてきだね』と言ってもらえることで、そこに価値が生まれてきた」と話す。「どこの地方でも、その地方に合わせた見せ方で同じような取り組みは絶対にできる」と言い切る。

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 北陸新幹線の開業で全国屈指の観光都市となった金沢市。ひがし茶屋街近くの空きビルを再生し、今年3月開業したシェア型複合ホテル「ハッチ金沢」が注目を集めている。コンセプトは「北陸ツーリズムの発地(はっち)」。宿泊機能だけでなく、北陸の伝統工芸や食、まちづくりをテーマにしたイベントや展示を施設内で企画し、石川だけでなく福井、富山への旅の出発点になっている。

 ホテルのデザインを担当した空間デザインプロデューサーの小野司さん(39)=東京=は、北陸の伝統工芸に触れ「東京は“輸入”した価値をブームにして消費しているまち。一方、地方のものづくりの職人は自分と向き合って価値を突き詰め、いいものを世界に発信しようとしている」と感じるようになったという。

 ハッチ金沢開業後も北陸で新たなプロジェクトに関わっている小野さんは21日、SNSにこう書き込んだ。「北陸から世界に驚きを。地方を巡ってると、東京を驚かせたいとは、もうあんまり思わなくなった」

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