虐待防止には子育て支援とともに社会全体での見守りが必要(写真はイメージです)

 子どもが虐待によって死に至る事件が続いている。ひどいあざがある、家に帰りたがらない、泣き声や怒鳴り声が聞こえる−。福井県総合福祉相談所(福井市)にも、虐待が疑われる子どもたちに関する相談が連日寄せられている。11月の「児童虐待防止推進月間」に合わせ、虐待の定義や現状を調べた。虐待の防止には親族や近所、学校など周囲の目配りも重要になっている。

 ■生命や発達に影響

 ニュースでしばしば耳にする「児童相談所」の役割を、福井県では県総合福祉相談所と敦賀児童相談所(敦賀市)が担う。県外では相談所の職員「児童福祉司」を一般の行政職員が務めることもあるが、福井県では大学などで知識を身につけた専門職員が担当。虐待の情報が寄せられる(通告)と学校や保育所、家庭訪問などを通じて子どもの様子を調べる(対応)があり「生命や成長、発達に影響がある」と判断した場合は一時保護や助言指導などを行う(介入)。

 虐待には▽殴ったり蹴ったりする「身体的」▽言葉や行為で心を傷つける「心理的」▽家に1人で放置したり、食事を与えない「育児放棄(ネグレクト)」▽体を触ったり性行為を強要する「性的」−の4種類がある。「激しい暴行などのイメージがあるかもしれませんが、要は『子どもとの不適切な関わり』のことなんです」と同福祉相談所の白崎俊一郎次長は説明する。

 ■昨年度353件

 昨年度、両相談所が対応した県内の事例は353件。最も多かった身体的虐待は171件、続いて心理的が99件、ネグレクトが78件、性的が5件あった。虐待者の割合は実母が一番多く52・1%で、実父が38・2%、実父以外の父が6・2%だった。

 身体的虐待はあざや傷、やけどなど目に見える証拠があるため気付きやすい。骨折などの大けがをしている場合もあり早急な対応が求められる。

 心理的虐待は「死んでしまえ」などの暴言を吐く、きょうだいで対応を変えるといった形で外には見えづらい。子どもの前で家族が暴力をふるう「面前DV」も近年含まれるようになり、件数が増えてきた。ほかの虐待もあることがほとんどで、子どもが家に帰りたがらない、親を怖がる、表情が乏しい—などの兆候が出やすい。

 ネグレクトは食事を与えない、予防接種を受けさせない、家の中がごみだらけ—など。子どもがひどい虫歯だったり、体や衣服が汚いことが多い。性的虐待では女の子が対象になることが多く、なかなか被害が表に出にくい。

 ■貧困や孤独から

 虐待の背後には、親の貧困や、親同士で相談する相手がおらず孤独などの要因があるという。また虐待を受けていた子どものうち3割で、親になってから子どもに虐待してしまう「連鎖」が起こっているとされる。白崎次長は「虐待防止の基本は子育て支援。貧困対策や相談体制の充実を図ることが重要」と話す。

 親族や近所、保育所、学校など周囲の目も大切だ。昨年度県内で対応した虐待のうち、市町の福祉事務所(学校や保育所からの情報も含む)からが最も多い83件(23・5%)、近所や知人からが43件(12・2%)だった。▽ひどい泣き声や怒鳴り声、不審な物音が聞こえる▽暗くなっても家に入れずうろついている子がいる−といった状況が続く場合、相談所に通告しなければならないと法律で決められている。

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