大岩(右)をご神体とする神社の境内を撮影するドリューさん=19日、福井県勝山市平泉寺町大矢谷

 福井県勝山市平泉寺町大矢谷(おおやだに)の水田脇を抜けると、突如、高さ20メートルを超える巨大な岩が現れる。この岩をご神体とする大矢谷白山神社を今にも押しつぶしそうだ。福井市在住のスティーブン・アンドリュー・ボーラ(塚倉ドリュー)さん(36)は「初めて見たときは言葉を失った。福井の人にお勧めスポットをよく尋ねるけど、これほど神秘的な場所を知っている人はほとんどいない。不思議だよね」。

 米国出身のドリューさんは2006年に来日。翌年に結婚して以来、家族と福井で暮らしている。休日に撮りためた趣味の写真をまとめ、英文ガイド「福井の名所100選」を11年に自費出版した。

 ドリューさんの被写体は観光地とは限らない。知る人ぞ知る小さな寺社や緑に囲まれた滝、春から秋へと装いを変える水田も魅力的に映る。「福井にはアメリカでは見たこともない“色”があり、歴史的に興味深いストーリーがある。ただ道を歩いているだけで写真を撮りたくなる場所がいっぱいだ」

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 山形県出身の高橋要さん(28)は、約1年前に地域おこし協力隊として福井市殿下地区に移住。浄土真宗の法要「報恩講」を初めて知った。山あいの集落の住民が寺に集まり、女性たちが郷土料理を振る舞う風習が、市街地育ちの高橋さんには新鮮だった。「地域の人たちが定期的に集まって、つながりを確かめ合う場になっている。人との関係を大事にする福井ならではの良さじゃないかな」

 福井市に昨年Uターンしてゲストハウス「サミーズ」を経営する森岡咲子さん(30)。これまでに国内外から延べ1200人以上の宿泊客を迎え、自らが感じる福井の面白さを伝えている。英国から訪れた20代女子学生には、朝食にしようと土鍋で炊いたコシヒカリでおにぎりの作り方を教えた。その何げない体験で「日本の文化が学べた」と興奮しきりだったのが忘れられないという。「特別なことって実は求められていない。福井の日常を普通に味わってもらうのが大事」

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 全国各地の移住相談窓口が並ぶ東京・有楽町の認定NPO法人「ふるさと回帰支援センター」には昨年、前年比1・8倍の1万7830人が訪れた。来場者を対象にした調査で決まる「移住希望地域ランキング」で福井県は2年連続で上位20位圏外だった。

 先の森岡さんら移住者を招き、福井へのU・Iターンを呼び掛けるセミナーを企画している相談員の小野寺杏里さん(32)=福井市出身=は「福井は日本が昔から大切にしてきた暮らしが残っている場所だけに悔しい」と唇をかむ。その上で「東京で『福井に来て』と叫んでいても効果には限界がある。福井に暮らす人たちが『自分たちのまちはいいところ』と発信することに勝るPRはない」と力を込める。身近にある福井の魅力を再定義するときだ。

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 何げなく暮らしていると、福井の魅力を見過ごしてしまいがち。その価値を見つめ直して共有し、打ち出していくことが、持続可能な地域づくりにつながるはずだ。「記者である前に福井人」を合言葉にまちづくりの実践に取り組んできた企画班が次なる一歩を踏み出し、読者の皆さんと一緒に福井の色「ふくいろ」を発見、発信していきます。

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