水上さん(左)ら利用者と記者が一緒に仕事をしているコワーキングスペース「sankaku」=14日、福井市中央1丁目のガレリア元町商店街

 コワーキングスペース「sankaku」で、いつも机を並べて仕事をしている映像作家がいる。福井市の水上晃一さん(43)。名古屋市で独立開業して10年以上の実績を積んだデザイン会社を仲間に託し、昨年Uターンした。

 きっかけは、まちづくり企画班が福井市越廼地区で開いた「ふくいフードキャラバン」の動画だった。漁港にしつらえたテーブルセット。特産のイカをたっぷり入れてその場で調理したパエリア。「食とおしゃれな雰囲気が今の時代を切り取っている。ローカルが持っている潜在的なものを福井に感じた」

 水上さんはその後、企画班が開いた昨年4月のイベントに駆け付け、半年後に故郷に拠点を移した。創作活動に専念しながら、暮らしを充実させるための生き方を探っているさなかだったという。才能ある人のUターンを後押しできたのは、活動への大きな手応えになった。

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 人口減少社会の中で、地域の持続可能性をどう高めるのか。企画班がまちづくり活動の根底に置いている問題意識は、全国の地方都市が抱える共通の課題だ。地方創生の名の下に、どの自治体も定住者の維持・増加に知恵を絞り、U・Iターン者を呼び込もうとしのぎを削っている。

 地域間で激しさを増す人口獲得競争の中で、福井はいったい何をアピールしていくのか。

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 感度の高い若い世代は、水上さんのように、地方の暮らしの豊かさに目を向け始めている。まちづくり企画で連携、協力してきたデザイナーや建築士の人たちは、気付けばほとんどがU・Iターン者だった。福井を知り、その魅力をつかみ直すには、外からの目線も持っている人たちの力が大きかった。

 そのうちの一人、大阪府から3年前にUターンして、自宅でシェアスペースを運営する福井市の前田浩貴さん(30)は「自分で体験しながら面白いことを発掘していく楽しみが福井にはある」。県内各地のワークショップでサバのへしこやつるし柿の作り方を学ぶなど、地元では「当たり前」の文化を新鮮な目で感じ取っている。

 「ローカルな暮らしの現場に福井の面白さがある」と話すのは、東京都でシンクタンクを経営する福井市出身の内田友紀さん(33)。地域の新たな魅力を都市部に発信する同市の事業「魅える化プロジェクト」の運営を担うことになり、8月からsankakuを利用。ものづくりや郷土料理の担い手の思いに触れながら「価値を可視化していきたい」と意気込む。

 地域性のある食生活、地域住民の顔が見えるコミュニティー、気軽に自然を楽しめる環境。企画班が活動のよりどころにしてきた身近にある福井の良さにこそ、U・Iターン者を引きつける力がありそうだ。それら福井の豊かさをいかに発信できるか。まちづくり企画班は次のステップに進むことを決めた。(細川善弘)

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