大勢の子どもたちでにぎわい母親たちにも好評の子育て支援施設「カンガルーのお部屋」=4日、福井県勝山市片瀬町1丁目

 福井県勝山市の北東部北谷町。国道157号を行き交う車はまばらで、点在する畑に農作業をする住民がわずかに見える。

 同地区は市内で最も人口減が進み1970年871人だった人口が昨年88人にまで落ち込んだ。減少率は約90%にもなる。「道路やトンネルが整備され若い人が次々出て行った。市内まで車で10分程度。生活に不便はないんだけどね」と、高齢の男性は首をひねる。

 85年に3万人超だった市の人口は今年9月末に2万4210人となり、この30年で約5千人減少した。

 高齢化も進む。65歳以上の高齢者数は2000年に人口の25・6%だったのに対し、昨年は33・9%と県内自治体でも3番目の高さ。県全体の高齢化率28・6%と比較しても際立つ高さだ。

 人口減対策として市ではさまざまな施策を打ってきた。移住・定住増へ住宅の新築やリフォーム工事費を最高100万円助成。昨年からは一軒家、マンションを1泊千円で貸し出す「お試し移住体験施設」をスタートさせた。これまで47人が132日間利用。ただ利用者の中で実際に定住したのは1家族と1人のみと、人を呼び込む難しさを表している。

 人口流出を防ぐ手だてとして子育て世代へも手を打つ。保育料の第3子以降無料、学童保育無料、子ども医療費は中学生まで助成するなど、市は「子育て支援日本一」を目指している。

 「自然に恵まれた勝山は子育てするにはいい環境。ただ出産する環境としては不安を感じる」。子育て支援施設「カンガルーのお部屋」に集う30代女性の声は、多くの母親に共通する悩みだ。

 福井勝山総合病院(旧福井社会保険病院)は医師不足のため07年に分べんを中止。妊婦検診は行っているものの、市民は市外での分べんを余儀なくされている。「検診で福井市の病院まで40分、待ち時間もあり丸1日がかり。関西の友人はこの分べん態勢にUターンをあきらめた。ほんとは地元で産めると安心なんですが」

 中高生アンケート(第5次市地方創生総合戦略)では「住み続けたい」「いったん市を出てもいずれ帰ってきたい」が53・7%を占めた。豊かな自然と観光資源を、地元に暮らす子どもや若者は魅力的に捉えている。しかし現実には大学進学後にその3分の2は戻ってこない。

 住みやすい環境をどう整えるか、課題が突き付けられている。

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 任期満了に伴う勝山市長選は12年ぶりに選挙戦となることが確実となっており11月20日告示、27日に投開票される。市長選を前に市の課題を問う。

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