空きビルを再生して設けたカフェで、福井県内農家の女性から野菜のおいしさを教わる子どもたち=11月3日、福井市中央1丁目のガレリア元町商店街

 福井市のガレリア元町商店街の空きビルをリノベーションした「これからビル」のカフェで、子どもたちが福井の野菜や郷土料理のおいしさに触れるワークショップを楽しんでいる—。ピクニックに出掛けるようにまちなかを気軽に楽しんでもらおうと、11月3日に開いたイベント「不自然ピクニック」(福井北ロータリークラブ、まちづくり企画班主催)の光景だ。

 目的は、これからビルや、近くの商店街の広場「新栄テラス」を活用してまちににぎわいを生むこと。加えて企画班にとっては、発足当初から続けてきた食のイベント「ふくいフードキャラバン」の集大成という大きな意味があった。

 1日3回のワークショップの講師は、県内農家や地域で郷土料理を守っている女性たちの4グループ。いずれも約2年間で県内7カ所を巡ったフードキャラバンを、ともに作り上げてくれた地域の皆さんだ。福井のまちなかと各地をつなぐことは目標の一つだっただけに、うれしい一日になった。

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 「まちは自分たちでつくるもの」。頼りなくても記者自らが活動する姿を見せていくことで、民間主導のまちづくりの動きを各地に起こせないかと紙面に込めたメッセージ。何よりも自分たちの背中を押した。

 連載開始直後の2014年3月、メッセージに呼応するように企画班に届いた「何か一緒にできればいいですね!」という一通のメール。フードキャラバン誕生のきっかけだった。

 送り主は大阪から鯖江市河和田地区に移住したデザイナーの新山直広さん(30)。地域でものづくりに携わる皆さんと連携し、同年6月に河和田フードキャラバンを開いた。その様子を紙面やネット動画を通じて発信すると、やがて「うちでもやってみたい」と声が掛かるようになった。

 新山さんはその後、仲間とつくっていたグループを会社組織に成長させ、今や河和田のまちづくりには欠かせない存在になっている。新山さんは「ゼロから生み出すことは難しいけど、そこにある地域の資源を磨けば光ることをフードキャラバンを通して学んだ。今の自分たちの活動の原点」。協力してくれた皆さんがそれぞれ活動の幅を広げている。

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 フードキャラバンが関心を集めたのは、郷土食を通じてその土地ならではの風土や暮らしを表現したからだろう。監修役の料理研究家・佐々木京美さん(鯖江市)によると、レストランの世界ランキング1位を獲得した北欧にある店は、料理を通じて地域の文化、自然、歴史を伝えることを目標にしているという。佐々木さんは「それならば、雪深い中でも地域の食材を生かし、脈々と受け継がれてきた福井の郷土料理は世界に誇れる」と話す。

 きっと食だけに限らない。住んでいても気付かない、身近すぎるからこそ見過ごしてしまう魅力が福井にはあるはずだ。(高島健)

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