輸出用ラベルが貼られた日本酒=福井県大野市の南部酒造場

 海外での日本酒人気の高まりを受け、福井県内の酒蔵がアジア進出を加速している。県産日本酒の輸出量は、昨年まで4年連続で過去最高を更新。アルコール類の多様化や人口減少で国内販売が先細りする中、各酒蔵はブランド力を磨くとともに、アジアの新興市場にも軸足を置いた戦略で販路拡大を図っている。

 「アジアは近い。東京や大阪に出るのと同じスタンスで販路を求めている」。老舗の酒蔵「越の磯」(福井市)の礒見邦博専務は、アジアのマーケットをこう捉える。同社は香港を皮切りに、台湾やシンガポールなど五つの国と地域に輸出を展開している。

 輸出を始めたのは13年ほど前から。現在は売上高の約2割を占め、今後5割まで引き上げたい考えだ。礒見専務は「輸送コストがかかり、国ごとに税制が違うなど難しさはある」とする一方、「海外に行かないと何も始まらない」と言い切る。アジア各国での日本酒の認知度は高まっており、「福井の独自性を発信すればファンは増える」と、さらなる輸出拡大を目指す。

 県酒造組合によると、日本酒の輸出量を示す輸出免税数量は、2012年に100キロリットルを突破し、15年は173キロリットルに増加。07年に海外へ出荷していたのは8酒蔵だったが、ここ数年は15前後で推移する。

 黒龍酒造(福井県永平寺町)は、16年6月期までの7年間で輸出量は約2・5倍に増えた。海外展開は国内と同様、ブランディングに重きを置き、品質管理も徹底する。水野直人社長は「本物の味わいを丁寧に伝え、長く愛してもらう。福井の豊かな食とセットにした形で黒龍ブランドに親しみを持ってファンになってもらい、福井を訪れてもらうことが業界全体の盛り上がりにもつながる」と説明する。

 県の支援で香港から輸出を始めた真名鶴酒造(福井県大野市)は、エスニックや中華料理に合うという甘酸っぱい味の酒を輸出の主力とし、海外向けの新商品も開発した。泉惠介社長は「酒は辛口という固定観念から抜けだし、外国人に寄り添った商品を提案して差別化を図りたい」と話す。

 県酒造組合の南部隆保会長(南部酒造場社長)は、中小零細企業が多い県内の酒蔵が置かれた現状について「大手との価格競争では勝てない。大吟醸酒や純米酒といった高価格帯の品質、独自性が国内外の評価につながる」とする。海外展開については「ニーズとチャンスがある限り、積極的に出るべきだ」と強調する。日本酒は、アジア市場では富裕層の消費が中心。ただ今後は家庭での需要にも期待でき、伸びしろは大きいと展望する。

 日本酒は海外でも「他県間競争」が熾烈(しれつ)だ。県は県産の新しい酒米の開発を進めており、福井の水、独自の県産酵母、そして各酒蔵の高い技術力と合わせた「オール福井」の酒造りを後押しする。

 組合側も統一ロゴマークを使ったキャンペーンなどで、認知度アップに力を入れる。南部会長は「国内外で福井の個性をいかに発信し、魅力を知ってもらうか。福井しか出せない味で付加価値を高め、福井ブランドを確立できるかが輸出拡大の鍵」とみる。

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