共作のロックバンドのフォトブックを手に笑顔を見せる宮下奈都さん(左)と堀田芳香さん=福井新聞社

 福井市在住の作家宮下奈都さん(49)と同市出身のフォトグラファー堀田芳香さん(50)=東京都=が文と写真をそれぞれ担当した4人組ロックバンドのフォトブック「僕らにとって自由とはなんだ」が発刊された。2人は高志高3年時のクラスメートで、バンドを結成していたほどのロック好き。卒業後30年を経て創造の世界に生きる2人が手をとり、熱愛するバンドへの思いを込めた一冊に仕上げた。「心の赴くまま自由に書いて、撮った“2人の楽しさの結晶”。音楽が聴きたくなる本」と話している。

 4人組バンドは「Nothing’s Carved In Stone(ナッシングス カーブド イン ストーン)」。堀田さんはポール・マッカートニーやメタリカ、レディー・ガガら洋楽アーティストのライブ写真を中心に手掛けている。「Nothing’s−」は2009年のデビュー時から撮影してきた。

 14年夏、「Nothing’s−」が福井でライブを行った際、堀田さんが宮下さんを誘った。演奏技術の高さと格好良さに強く惹(ひ)かれた宮下さんは「この衝撃、感動を2人でかたちにしたい」と思ったという。今年5月、東京の日比谷野外大音楽堂の3千人ライブにともに足を運び、抱き続けた思いは“頂点”に。バンドの所属事務所へ直行し、出版を説得した。

 日比谷野音での様子やメンバーの素顔を、一ファンの視点でみずみずしい文とエネルギッシュな写真で表現。楽屋での一コマを切り取ったオフショットなども散りばめた。

 開演を待つファンの心情と漏れ聞こえるリハーサルの楽器の音やボーカルの声を、宮下さんは「空に溶ける音を拾うみたいに、青い空を見上げる人たち」とつづり、その高揚感を伝えている。

 「ライブの間だけは『生きている』感じがする」とのメンバーの言葉に「ライブという単語は『生』。濃い『生』を生きるアーティスト。進化する素晴らしさを書きたかった」と宮下さん。本屋大賞受賞後の多忙の中でも、楽しみながら書いたという文章に、堀田さんがダイナミックな写真で応えている。宮下さんは「書くことが苦にならなくて、どんどん筆が進んだ」。堀田さんは「気持ちで動いて写真を撮ることが、こんなに楽しいことだったとあらためて実感した」と語る。

 「僕らにとって自由とはなんだ」と付けられたタイトルは歌詞の一節。バンドにとって自由とは「歌を歌うこと」であれば、2人にとっては「小説を書くこと」「好きなものを撮ること」。念願の本を手に「思っていたことを実現できる力が付いたんだと思うと感慨深い。一つの仕事をして、新たな信頼が生まれた」と口をそろえた。

 B5変型判、128ページ。2800円(税別)。リットーミュージック社刊。

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