初競りで10万4千円の最高値がついた越前がにの最上級ブランド「極」=2015年11月6日、福井県越前町大樟の越前漁港

 越前がに漁が今季も例年通り6日に解禁になる。昨季、福井県は極上品質のズワイガニを「極(きわみ)」と名付け、国内最高峰のカニ産地として福井の名を改めて全国にとどろかせた。越前がに全体の価格底上げにも成功。香港、シンガポールでの「食文化提案会」でも福井県が誇る越前がには“主役”としてバイヤーらの注目を集めそうだ。一方で県内飲食業者らからは、ブランド力の一層の向上も求められている。

 カニは一般的に漁獲量が増えれば単価が下がる。しかし昨季のズワイガニにセイコ、ズボガニを含めた越前がに全体の漁獲量は前季比19%増の474トンとなった一方で、漁獲金額も19%増えて過去最高の21億2100万円を記録した。その要因として県は「極」効果を挙げる。

 県は「極」2年目の今季、福井県水産業の振興とともに流通・販売戦略にも一層力を入れる。底引き網漁のダイナミックな映像を漁解禁日から東京都内3カ所の大型ビジョンなどで放映するとともに、越前がにを証明する黄タグにQRコードを付けて購入者にスマートフォンなどからの視聴を促す。首都圏などで「福井といえばカニ」のイメージを、より高めて福井県誘客に結び付けるのが狙いだ。

 昨季、越前町漁協などの漁現場では▽重さ1・3キロ以上▽甲羅幅14・5センチ以上▽爪幅3センチ以上—という極の基準を厳格に運用した。中でも重さは、カニはゆでると身が締まって軽くなるため、「1・5キロ以上」を自主基準とした。

 プロの目で「左右の足のバランスが悪い」と判断すれば、極タグは付けないなど姿形にも徹底してこだわり、ブランドの信用度を高めた。こうした努力が、昨季の越前がに全体の漁獲金額を約2割上向かせる好循環を生んだ。ただ福井市の料亭・開花亭の開発毅社長は「極に関わる生産者、流通業者、料理人らが一丸となり、他産地の追随を許さない参入障壁を築くべきだ」と訴える。

 鳥取県も昨季から「五輝星(いつきぼし)」という名で松葉がにのブランド化を始めた。石川県にも「加能がに」がある。単価で圧倒的に勝る越前がにだが、取れるのは同じ日本海。カニは年末の接待にも重宝され、景気動向に左右される食材でもある。それだけに開発社長は「極が今後も安定して売れていくためには『本物を本物たらしめる定義』が必要」と考える。

 具体的には、今以上に温度管理を徹底した流通、福井県ならではの調理法の体系化、新たな食べ方の提案などを挙げる。「富裕層といっても何にでもお金を出すわけじゃない。極がなぜ高いのか。しっかりとした理屈がなければ、納得してもらえない」と指摘する。

 極のブランディングは、まだまだ始まったばかりの段階。県水産課は「インパクトのあるPRの仕方や料理の提供方法などの工夫を重ねながら、トップブランドとしての地位をさらに高めていきたい」と意気込んでいる。

 ■メモ

 香港とシンガポールで開く「食文化提案会」の日程は、越前がにの漁解禁後に合わせて設定した。県は「極」を目玉商品に据えて現地バイヤーらの関心を引く方針だが、セイコガニの売り込みも積極的に行う。「小さいものでも、むき身を甲羅に並べるなど付加価値を高める工夫一つで、おそらく国内価格の数倍の値が付く」と食料産業振興課。こうしたもくろみで、県内インバウンド(訪日外国人客)の拡大にもつなげる戦略を描く。

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 環太平洋連携協定(TPP)発効も見据えた政府の輸出振興策を受け、福井県内でも農林水産物の生産量と販路の拡大を目指す取り組みが活発化。アジア輸出など「ふくいの食」の最前線を紹介する。

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