【越山若水】20世紀前半、今の熱中症に相当する日射病は、太陽光線に含まれる危険な化学線が頭蓋骨に浸透し、脳に「太陽の一撃」を食らわすために発症すると思われていた▼だから予防策として、光線の体内侵入を遅らせる日よけのヘルメットや背骨に貼るキルト製のパッドが流行した。帽子の上に薄い金属板を載せる人まで現れた▼インドに駐留する英国軍兵士も、昼間は日差しを避けるヘルメットの着用を義務づけられた。熱中症の原因が体温調節の不全と解明されたのは1917年だという▼人間は一般に37度を超えると高体温とされる。暑い中で運動や労働を行い水分補給をしないと、発汗による体温調整がきかなくなる。中枢温度41度を超えると熱中症にかかり、42度で命の危険を招く▼体を冷やす効果的な方法は、生ぬるい水に浸したスポンジで全身を拭う。重症なら首や脇の下などに冷却剤を当てることだ(「人間はどこまで耐えられるのか」河出文庫)▼梅雨が明けた途端、今年初の猛暑日を記録し連日の真夏日続き。容赦ない炎熱で熱中症の脅威は増大し、特に体温調整機能が落ちたお年寄りは要注意▼日射病の原因「太陽の化学線」説や「太陽の一撃」防止のヘルメットを笑うなかれ。何しろ前世紀の話である。今や熱中症対策もご存じだろう。暑さ緩和の工夫、水分・塩分の補給、こまめな休憩―を忘れずに。

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