【越山若水】子ども時分の夏休みの楽しみといえば、近所にあるため池でのフナ釣りだった。早朝に竿(さお)を出せばいとも簡単に釣れた。バケツにいっぱいの釣果を自慢したくて家に飛んで帰ったものだ▼忌まわしい記憶もある。遊び仲間が誤ってため池に転落した。手を延べたが届かなかった。結局は助かったけれど、水中に吸い込まれていく彼の悲しげな顔が忘れられない▼西日本豪雨で、ため池が改めて注目されている。雨が上がっても決壊の恐れがあり、警戒が必要な状態が続いているという。広島県内ではおととい、避難指示まで出された▼なぜ? と疑問だったのは、思い出の中のため池が小さすぎたからだ。いま問題なのは、もっと大規模なもの。たとえば周囲20キロ、香川県にある国内最大の「満濃池」のような▼今度の豪雨が満濃池を脅かしたとは聞かない。が、瀬戸内海対岸の広島にも約2万のため池がある。多くは江戸時代以前に造られ老朽化が進んでいる▼豪雨が去っても、山にしみ込んだ水は土砂とともにため池に流れ込み続ける。晴れたから、と安心した隙を時差攻撃に見舞われてはひとたまりもない▼実は同僚が先月に、ため池の防災について論説を書いている。これによると福井県にも、決壊して民家などに危険を及ぼしそうなものが343カ所ある。その論考を漫然と読んだわが身のうかつさを恥じている。

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