ストップウオッチを見ながら大声を上げる児童。時間を学ぶ算数の授業は2校合同だ=9月27日、兵庫県香美町の兎塚小

兵庫県香美町

 「あああー」。ストップウオッチを持った児童たちが、どれだけ声を出し続けられるかを競っていた。「よっしゃー、オレ、20秒超えたで」「私は15秒や」。時間について学ぶ3年生の算数の授業には、二つの学校の児童が交ざっている。授業後の休み時間には両校の児童が鬼ごっこを楽しんでいた。

 兵庫県香美町立兎塚(うづか)小に、6・3キロ離れた村岡小の児童がバスでやって来る。2013年度から始まった月に一度の合同授業。3年生は2校合わせても22人しかいない。

 人口約1万9千人のこの町も少子化が進み、2002年に1449人だった児童数は現在833人。町内10小学校のうち、9校は1学年1クラスで複式学級も多い。

 町は小規模9校を海側と山側の5、4校に分け、グループ内で年間10回、計30時間の合同授業を展開。少人数ではできない音楽の合唱や、体育で大人数によるボール遊びができるようになった。

 兎塚小3年の井上安雅人(あまと)君(9)は「村岡の友達と一緒に授業を受けるのは楽しい。授業が分かりやすい気がする」とうれしそうだ。

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 合同授業は、学校の統廃合を回避するためでもあった。

 11年、同町教委は町長から小中学校の統廃合を検討するよう諮問を受け、3年以上かけて議論を重ねてきた。

 保護者や町民約3300人に行ったアンケートでは「現状維持」を願う声が半数以上を占めた。ただ「人間関係の固定化」「競争心が育ちにくい」といった不安があることも浮き彫りになった。

 行き着いたのがこの合同授業だ。大規模校か小規模校かの二者択一ではなく、両者のメリットを生かした第三の選択肢。兎塚小の三宅博校長は「合同授業によって、子どもの態度に変化が出てきた」。人前で話せなかった子どもが、堂々と話せるようになったケースもあるという。

 合同授業は教員同士の切磋琢磨(せっさたくま)にもつながっている。この日の算数は村岡小の小井塚菜月教諭(26)、国語は兎塚小の上田静香教諭(40)が受け持った。小井塚教諭は「ベテランの先生の授業を見られるので非常に参考になる。サポートしている時には子どもの小さな変化に気付くことができる」と話す。

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 保護者の意識にも変化がみられる。13年1月の調査では「学校を維持してほしい」「できれば維持」が計40・6%だったが、14年10月には「維持してほしい」が48・2%、「連携の取り組みを見て判断したい」を含めると8割を超えた。

 一方で、各校は15年度から保護者、地域住民らに教育方針や取り組みを説明し、学校存廃の意見を求める「教育環境会議」を開催。出席者の3分の2以上が統廃合を望めば手続きを進める流れだ。

 町教委の水垣清和副課長は「今後の統廃合の判断はあくまで住民に委ねる。地域の人材を輩出する学校なくして地域の発展はあるのかを、住民に問い続けていくことになる」。そこには、これまで自治体や地域住民は、学校の小規模化に伴う課題に、正面から向き合ってこなかったという深い反省がある。

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