【越山若水】「精進」と聞くと、大相撲の口上を思い出す。「一意専心、相撲道に精進します」。1993年、若乃花が大関に昇進したとき、協会の使者に決意の程を述べた▼仏教界でもおなじみで、俗世間との縁を切り悟りのためひたすら努力することをいう。また鳥獣魚肉など生臭いものを口にしない「精進料理」もよく知られる▼江戸時代の礼儀作法集「貞丈雑記」には「精進と云うは、『しらげすすむ』とよみて、身をきよめ、心つつしみて、専ら仏事に進みて怠らざるを云うなり」とある▼この流れでいけば「精進が足りぬ」と叱責(しっせき)されても当然。西日本各地を襲った豪雨被害が差し迫る5日夜、安倍晋三首相ら自民党議員が飲み会を盛大に開催。しかもその写真をネットに掲載していた▼首相の地元山口県や被災地広島県の地酒も振る舞われた。国を預かる立場として「責任感がない」「一強体制から来る慢心」との批判が、野党からも仲間内からも相次いだ▼さすがにばつが悪かったのだろう。首相は9日になって外遊中止を発表した。きのうは甚大な被害に遭った岡山県を視察し、被災者を見舞い激励した▼今回の豪雨災害では、テレビ報道も日本列島の西と東で温度差が顕著に。東京など東日本の当事者意識の希薄さが問題視された。被害の全体像は今なお把握できない。政権は救援と復旧に「一心精進」あるのみだ。

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