放課後、交流スペース「だんだん広場」で談笑する大谷小中学校の児童生徒たち=9月27日、石川県珠洲市

石川県珠洲市の小中学校再編

 玄関を入るとすぐ、9段の広い階段が目に入る。“小学生”と“中学生”の1〜9年生36人が集う「だんだん広場」だ。子どもたちは月1回、学年ごとに階段に座り意見を交わす。下級生は上級生が進行する様子に憧れ、上級生は下級生が発言する姿を温かく見守る。今は文化祭の準備の真っ最中で、生徒会長の濱海翔(かいと)さん(9年)は「この子たちも楽しめる内容を考えたい」と意気込む。

 石川県能登半島先端の珠洲市大谷地区にある市立大谷小中学校は今春、西部小と大谷中が一緒になり、小中9年間を一貫して学ぶ「義務教育学校」に生まれ変わった。大まかな教育課程を前期(1〜4年生)、中期(5〜7年生)、後期(8、9年生)に分けており、濱育代校長は「心身の発達段階に合っている。義務教育学校は学校の活動指針を実現しやすい」。

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 大谷地区は、他の地区と同様に児童生徒数の減少に伴い学校統合を繰り返し、西部小と大谷中だけが残った。その後も続く児童生徒数の減少を受けて市教育委員会は2008年、同地区を含む三つの地区で小中一貫教育を導入する方針を示した。ポイントは「地域に学校を残し、地域の教育力を生かす」こと。子どもの通学時間の負担軽減も踏まえ、地区内の1小1中を一つの学校にする計画案を打ち出した。

 住民説明会では、保護者から「小中学校が一緒になっても1学年当たりの人数は変わらない」と、複式学級の継続や部活動数に対する不安の声が上がったという。それでも「地元に学校を残してほしいという要望が圧倒的に多かった」と大谷小中PTAの濱幸治会長(39)。西部小から近くの小学校までは約10キロ離れており、しかも峠道。「何より子どもの通学が心配だった」と振り返る。

 住民たちには、伝統の塩作りなどを次世代に引き継ぎたいという強い思いがあった。9月の秋祭りでは例年通り子どもたちが主役になり、住民から習った横笛や太鼓を鳴らした。濱校長は「もし学校がなくなっていたら、文化も一緒に消えてしまったかもしれない」と話す。

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 学校教育法の改正により今春設置された義務教育学校は全国で22校ある。福井県では、福井市の福井大附属学園が来春から、同大附属小・中を義務教育学校にする予定だ。敦賀市では角鹿中と校区内3小学校との統合に向けた検討が進む。松木健一・同学園長は「小学校同士、中学校同士の統合は地域の衰退、通学時の負担増につながる。義務教育学校は選択肢の一つ」。社会で生き抜く力が今の時代求められているといい、「小中一体となり、長期的な視点で力を身に付ける必要がある」と強調する。

 大谷小中の保護者の合言葉は「おらっちゃ(私たち)の子どもは宝。宝がいる学校には最大限の協力を」。施設面、教育面も充実し、地域の満足度は高いという。濱校長は「高校に進むと生徒数が一気に増える。その時、ギャップが生まれないようにするのがこれからの課題」と見据えた。

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