2枚の黒板をL字形に配置して授業が行われている赤崎小の複式学級=福井県敦賀市の同校

 敦賀湾を望む福井県敦賀市の赤崎小。複式学級の教室に2枚の黒板が置かれている。5・6年の教室をのぞくと、正面の黒板を向き2人の5年生が分数問題に挑戦中。「分母は何を表してるんだっけ?」。担任教諭が5年生に問いかけていると、廊下側にある一方の黒板で速さの計算に取り組んでいた1人だけの6年生から元気な声が上がった。「先生、単位をそろえたら僕の予想と違った!」。違う内容の授業が、すぐ隣で同時進行する。全校児童11人の日常だ。

 「教員が指導していない間も、児童はただ自習しているのではない。学習目標や課題を声に出し、主体的に解決に取り組む『一人学習』です」と山下典子校長。声が入り乱れても、集中した児童たちは気にしないのだという。

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 敦賀市通学区域審議会が、複式学級を望まない保護者の希望に応じ、校区外通学の要件緩和を答申したのは、2013年10月のことだ。当時の市教委の担当者は「切磋琢磨(せっさたくま)を求める保護者の声があった」と説明する。

 敦賀半島先端部の西浦中は当時、全校生徒8人。要件緩和を受け14年度から早速、校区内の全中学生が校区外通学を希望した。その時、地域は保護者を非難するどころか、4区長連名で14年2月、スクールバスを運行するよう市教委に求め、後押ししている。

 「大勢の中でもまれた方が、子のためと判断した」と地元色浜区長の山口辰一郎さん(55)。15年度からは隣接する西浦小も同様に休校になった。「歩いて通学する姿がなくなり、さみしい思いはある。しかし無理をしてまで学校を残してほしいという声は当時も今もない」という。

 今年8月の同市教育力向上会議。県私立幼稚園・認定こども園協会会長で県社会教育委員連絡協議会会長も務める徳本達之さん(57)は「学校は一定の規模を確保すべき」と訴えた。「学校での学びは教科だけではない。存続を求める地域の声があったとしても、配慮しすぎて子どもが限られた人間関係の中で育つのは良くない。地域の核は、大人が自分でつくるべきではないか」と考えている。

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 坂井市の竹田小、丸岡中竹田分校も、地域が市教委に休校を求め10年3月に閉鎖された学校だ。当時、地元のまちづくりグループ「竹田の里づくり協議会」が行った保護者へのアンケートでは8割が統合を望んでいた。

 休校の要望書を提出した竹田文化共栄会代表の中川輝雄さん(69)は就学前の子を持つ母親から言われた言葉が忘れられないという。「私はここに住み続けたい。でも複式学級なら、夫を連れて町へ行きます」

 中川さんは「これが住民の本当の声だと思った。あれで目が覚めた。学校閉鎖は苦渋の決断だったが、間違いではなかった」と話す。現在、建物は体験型宿泊施設として再スタートを切っている。

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