【越山若水】毒をごく薄めると薬になったり、薬も飲み過ぎれば毒になったりする。薬毒同源。薬と毒は人間に都合がいいか悪いかの違いにすぎず、コインの裏表の関係にある▼水も同じだと、このたびの西日本豪雨につくづく思う。人間が生きるのに欠かせない仏の一滴が悪鬼の塊となって多くの人命を奪った。恐ろしい水の顔を見た▼ふと、治水に尽力した県人が懐かしくなった。杉田定一、熊谷太三郎、大武幸夫といった国、地方政界の重鎮たちである。元県議の東郷重三さんも忘れ得ない人だ▼2000年12月5日付の小紙に、東郷さんのインタビューが載っている。この年は九頭竜川水系の治水事業100周年。その記念大会で感謝状が贈られた▼毎年のように水がつく村に育ち、治水はやらざるを得ないことだった。そう語った後の言葉が印象深い。「これからの100年はきれいな水を残さないといけない」。そのはずが自然は想像を超えた▼日本全体で見れば、治水はまだ十分ではない。最近まで「異常気象」と呼んでいた状態がいまや当たり前になったからだ。凶悪になった鬼には備えも強めねばならない▼豪雨が近づく5日、衆院本会議では水道法改正案が賛成多数で可決された。海外資本が運営権を握れば安定給水が維持できなくなると心配されている。これは仏の一滴の問題。鬼面に驚いてか議論が十分でない。

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