【論説】カジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備法案が10日の参院内閣委員会で本格審議入りした。当初、出席予定だった安倍晋三首相は、西日本豪雨を理由に欠席。ただ、災害対策の最前線に立つべき石井啓一国土交通相は審議を優先し委員会に張り付いた。豪雨被害を巡る政府対応が後手に回ったとの批判がある中、さらに不信を招く結果となったといえる。

 与党がそれほどまでに成立を急ぐカジノ法案。衆院では審議時間がわずか20時間で、多くの疑問が残ったままとなった。そもそも国会審議に付さずに、法案成立後に政令などで決める事項が約330項目に上るなど、白紙委任状態の法案では議論が深まらないのは当然だ。政府は説明責任を十分に果たすべきだ。

 とりわけ、ギャンブル依存症の増大につながりかねないのが、面積の問題だ。政府は当初の「1万5千平方メートル以下」を外し、IR延べ床面積の「3%まで」としている。これではIRを大きなものにすれば、巨大なカジノの建設も可能になる。大勢の集客が見込まれ、依存症が疑われる人を多く生み出しかねない。

 入場客への金銭の貸し付けをカジノ業者に認める規定にも異論が噴出している。貸し付けの対象は訪日外国人のほか、一定額以上の預託金をカジノ事業者に納める日本人。客ごとに返済能力を事前調査し、限度額を決める。富裕層を対象としているが、ギャンブルに前のめりになっている人に貸し付けることで依存症を助長する恐れも指摘されている。

 首相は「世界中から観光客を集める滞在型観光を推進する」と強調した。だが、カジノ誘致を目指す自治体などは、7~8割は日本人が占めると推計している。野党からは「人の不幸を食い物にして成り立つ経済」といった批判の声が上がっている。

 政府は「世界最高水準の規制」を繰り返し強調しているが、一方で依存症を防げるかは明確に説明できていない。IR導入自体が「やってみないと、どうなるか分からないギャンブル」(野党議員)との不安がくすぶっている。

 野党はカジノ事業者が民間企業であることも問題視している。刑法が禁じている賭博罪の例外規定として、競馬や競輪などの公営ギャンブルは認められている。カジノの民間企業が法務省の掲げる「目的の公益性」など8要件に沿っているか否かは疑問が残る。

 共同通信社が先月実施した世論調査ではIR法案を「今国会で成立させる必要はない」が69%に上っている。治安悪化や依存症増大などへの不安が背景にある。さらに反社会勢力などによるマネーロンダリング(資金洗浄)といった懸念も払しょくされない。

 与党が法案成立を急ぐのは、来春の統一地方選挙や夏の参院選を控え、支持者に慎重論がくすぶる公明党に配慮したためとされる。「成立ありき」の性急な対応が、禍根を残したと言われないか。

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