2012年に統合された富田小へスクールバスに乗って登校する旧蕨生小校区の児童。再編計画案では、スクールバスを弾力的に運行するとしている=福井県大野市蕨生

福井県大野市の学校再編案

 「和泉も打波になってしまう」—。過疎化で住む人がいなくなった山間地に将来を重ね合わせ、福井県大野市和泉地区の住民は憂う。人口約500人。「地域で子どもを見守り育てている」との自負がある。再編問題を受け、保護者や区長会、自治会などを代表する約15人で「和泉みらい検討会」を今春立ち上げ、不定期で会合を開いている。

 市教委が9月に公表した計画案では2023年度に市内全5中学校を1校、26年度に全10小学校を2校に統合し、新校舎で新たな学校を誕生させる。建設場所は決まっていない。

 和泉地区から仮に市街地にスクールバスで通うとなると冬場は1時間かかる可能性もあり、子どもの負担は大きい。保護者の一人は「それならどこかへ引っ越した方がいい」と言う。一方、学校が存続しても課題は多いとの声もある。本年度の児童生徒数は和泉小18人、和泉中5人。小学校の複式学級は二つで、4年生はいない。

 「どうしたらいいのか」。検討会でもさまざまな思いが入り交じるが、計画策定を着々と進める市教委に“待った”を掛ける意味も含め4月、意見書を提出した。「和泉の希望を残してほしい」

  ■  ■  ■

 人口減少に伴う再編の流れは、04年に市教委が策定した計画にさかのぼる。この計画で12年までに5小学校が2校に統廃合したが、一部は地元の強い反発で実行できなかった。その後、子どもの減少に拍車が掛かっているため、さらなる計画づくりに着手した。

 市教委は昨年、「小学校は段階を経て2校以内、中学校は2校以内」とする素案を策定。今年1月、学校教育審議会が素案通りの内容を答申した。これを受け市教委は計画案をまとめたが、内容は学校数、実施年とも変更された。

 学校を地域コミュニティーの拠点と捉える住民の中には過去の経験から「住民が合意しなければ実施できないはずだ」との見方がある。一方、市教委は「住民の意見は素案の説明会で収集して審議会に報告しており、答申に反映されている」とのスタンス。今後策定する最終計画では大きな変更はしない構えだ。

  ■  ■  ■

 市教委は再編によって、より多くの仲間と切磋琢磨(せっさたくま)できる環境になることを最大のメリットと掲げる。岡田高大市長も中学校の部活動選択の幅が少ない現状などを問題視し、「再編はぜひ実現すべきだ」との姿勢だ。

 背景には「今のタイミングで新築校舎に」との思いもある。今後10年余りで学校の約半数が、文部科学省が長寿命化改修に不向きとする築後45年に達する。この際、全ての子どもたちに平等な教育を提供しようという考えだ。

 現在各地で開く住民説明会では、地域から学校がなくなることを不安がる声に対し、松田公二教育長は「地域のことも極めて大事だが、学校の目的は教育。子どもは厳しい変化の時代を生きなければならない」と強調する。

 だが学校の数はもとより、建設場所が未定なことや、スクールバスの運行方法への不安などから「もっと慎重に検討すべき」との意見は多い。再編案は重大な局面を迎えている。

  ×  ×  ×

 この連載「学校のあした〜福井・揺れる地域」の感想、意見を募集しています。福井新聞社編集局社会部=電話0776(57)5110、FAX0776(57)5145、メールはhoudou@fukuishimbun.co.jp

関連記事
あわせて読みたい