自らの経験を踏まえ意見交換する県市民後見研究会の学習会=9月13日、福井市の県社会福祉センター

 認知症など判断能力が不十分な人を支援する成年後見制度の「利用促進法」が4月に成立し、担い手確保のための市民後見人の育成が、福井県内でも課題となっている。高齢独居世帯が増える中、後見人を担う社会福祉士や司法書士など専門職の負担は大きく、専門職と市民が連携して後見人を務める形を求める声もある。

  ■90万円の仏像■

 真冬の夜に徘徊(はいかい)し警察に保護されたが、認知症と分かりそのまま入院した1人暮らしの高齢者—。年金をあてにする無職の息子の浪費で介護が受けられなくなったり、自分の借金が原因で子どもとの関わりが絶たれたりした認知症の高齢者—。

 福井市で相談支援センターを開く社会福祉士の岡﨑賢さん(67)は、こういった人の後見人として、2003年から活動している。預金通帳や不動産などの財産管理のほか、月に一度は本人と面会し、心身状態を確認する。

 1人暮らしの被後見人の自宅へ出向いたとき、前の月にはなかった20センチほどの仏像が目に入った。90万円で購入したと聞き、すぐに解約した。

  ■増える認知症■

 岡﨑さんが現在抱える被後見人は県内4市1町の23人。社会福祉士の中には40人以上を担当するケースもあるという。岡﨑さんは「専門職の後見人は手いっぱいの状況」と話し、司法書士の全国組織「成年後見センター・リーガルサポート」県支部長の中尾亨さん(45)も「後見人の依頼を断るケースも出てきている。高齢化が進む中、後見人ができる市民を増やす必要がある」とする。

 県によると、県内で要介護認定を受けている認知症の人は2万8243人で、05年の1万5715人から79・7%増。高齢者の1人暮らしは、00年の1万4790人から10年には6500人以上増えた。福井家裁管内の後見人等の申し立ては07年121件、15年は181件となっている。

  ■学習会でゼロ■

 「最近は物を売る悪徳商法だけでなく、パソコンの保守点検契約といった目に見えない被害もある」。9月13日に県社会福祉センターであった県市民後見研究会の学習会。この日は6人が参加し、自身の経験などを語り合った。

 同会は県などが09年、10年に開いた市民後見人養成講座の受講生ら約20人でつくり、月に一度学習会を開いている。ただ、メンバーの中で後見人を務める人はゼロ。ある女性会員は「事故で文字が読めなくなった知人から後見人を頼まれ悩んだが、不安になり断った」、別の会員は「何かあったら専門職に相談できるという後ろ盾が必要」と訴える。

 岡﨑さんは専門職の立場からも、市民との連携が重要とする。「社会福祉士といっても、病院や施設に勤めており忙しく、時間的に後見人をできないケースがある。財産管理を専門職、心身状態の確認を市民が担当するといった役割分担ができれば、専門職も後見人を受けやすくなる」と提言する。

 ●成年後見制度と市民後見人とは

 認知症や知的障害などで判断能力が不十分な成人の財産管理や契約行為を支援する制度。判断能力に応じて後見、保佐、補助の3種類がある。申し立ては本人、配偶者、4親等内の親戚などに限られるが、市区町村長もできる。高齢化に備え、2012年の改正老人福祉法では、市民後見人の育成を市町村の努力義務と規定、利用促進法では市民後見人の確保を急務とした。

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