自室でテレビを見てくつろぐ入所者の男性。「もっと働きたい」と訴える=福井県大野市の救護施設「大野荘」

 日常生活を送るのが困難な障害のある人が生活保護を受けて入所する「救護施設」は、憲法で保障された「健康で文化的な最低限度の生活」を守る「最後の砦(とりで)」といわれる。福井県内唯一の救護施設「大野荘」(大野市)では、30〜90代の143人(9月1日現在)が自立を模索しながら暮らす。高齢化が進み、人生の大半を施設で過ごしたまま生涯を閉じる入所者もいる。

 ■老いに直面

 午前11時半すぎ、大野荘の食堂に入所者が次々と集まってくる。がっちりした体格の中年男性、おしゃべりに興じる白髪の女性、車いすや歩行器を使っている人など年齢も障害の程度もさまざまだ。

 入所の問い合わせは県内市町だけでなく、県外からもあり、現在は男性89人、女性54人が2〜4人の相部屋で生活している。1960年の開所当初から入所している人もいて、平均年齢は67歳。10年前に比べ約5歳上がった。食事や入浴などの生活介助が必要な人は全体の約3割いる。

 家族と分けて、施設の住所で住民票登録する「世帯分離」を行って生活保護を受ける入所者もいる。親が亡くなり、きょうだいやおい、めいが身元保証人の人も目立つ。保証人がおいやめいの世代になると、面会の回数も極端に減る。入所者の葬儀を施設で営む場合が年間3、4件あり、引き取られないまま保管し続けている遺骨もある。

 ■中間施設

 施設では一人一人に個別支援計画をつくり、部品加工や農作業などの作業訓練のほか、系列のグループホームなどでの自活訓練を提供している。自室でテレビを見てくつろいでいた男性(72)は、部品加工の作業を終えたばかり。「やっぱりもっと仕事をしたいよ」と笑う。

 施設長の木間幸生さん(66)は「救護施設はあくまで中間施設で、社会復帰や地域生活への移行を目指している。高齢などで寝たきりになれば養護老人ホームなどに移ってもらおうとするが、満室で移れない場合が多い」と説明する。

 生活保護法に基づいて設置される救護施設は「最低限度の生活」を提供する場所だ。他の福祉施設に比べて職員の配置基準などは低い。祖父母と同じ世代の入所者と接する若い職員の中には、信頼関係をつくるのに大きな負担を感じるという。

 ■精神障害6割

 近年は精神障害のある人の割合が増える傾向にあり、現在は約6割を占める。精神科病院への長期入院を減らす国の方針が背景にある。木間さんは「退院しても地域の受け皿が十分ではなく、救護施設と病院を行き来する人も少なくない。(障害者の)総合支援法や差別解消法など法整備は進んでも、制度のはざまに置かれる人は必ずいる」と指摘する。

 相模原市の知的障害者施設で入所者19人が刺殺され27人が負傷した事件から2カ月余りがたった。県知的障害者福祉協会の会長も務める木間さんは、障害のある人との共生が進まない現状に危機感を募らせる。

 「救護施設ができた当時、社会から隔離して収容するという発想があったことは事実。社会も企業も生産性ばかりを追い求め、障害のある人を排除する風潮が今も根強い。(容疑者の)障害を否定するような発言には、それを許していた社会のいろいろな問題が潜んでいる」

 【救護施設とは】 生活保護法に基づき、1950年に制度化された。現在、全国に180カ所余りあり、約1万7千人が入所している。施設数には地域差があり、福井県のように1カ所だけという県も少なくない。身体、知的、精神の障害の種別に関係なく受け入れるほか、アルコール依存症の患者、DV(ドメスティック・バイオレンス)の被害者、自殺企図者、生活困窮者らの一時保護も担う。

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