福井の漆器や和紙、笏谷石を発信している荒井史織さんの和食店「Shiori」=ドイツ・ベルリン

 福井市出身の男性がこのほど、ドイツ・ベルリンで福井の伝統工芸品をふんだんに使った和食店をオープンした。和紙や漆器、笏谷石を食器や調度品に用いており、男性は「福井の歴史や文化の価値を世界でアピールしたい」と意気込んでいる。

 男性は荒井史織さん(28)。明倫中、北陸高を卒業後、福井県外の大学に進み、東京の企業に就職した。2012年にドイツに移り、和食店で料理長として働いていた。「食を通して、福井のものづくりの心や伝統工芸の美を発信したい」と今年6月に独立して自身の店を構えた。

 店内では、福井窯業(福井市)が開発した笏谷石製のビアマグや能村漆器店(鯖江市)の食器、杉原商店(越前市)による和紙のメニューカバーなどを使用。開店にあたって荒井さんが各社に足を運び、店のコンセプトを説明し、オリジナル商品の開発を依頼した。「和食の心は、料理だけでなく、器や調度品にも込められている。素材と向き合い、素材の良さを引き出す福井の伝統の技で和の心を伝えたい」と話す。

 店舗はベルリン中心部でギャラリーや飲食店、ホテルが並ぶエリアに立地。築100年以上でベルリンの指定文化建物に登録されている元ギャラリーを改装した。ドイツでも和食人気は高まっているがベルリンは海に面していないため新鮮な魚介類を入手するのが困難で、和食を提供する上で苦労は多いという。

 日本の工芸品にこだわった飲食店は現地では珍しく、開店直後から連日満席の人気ぶり。メディアからも頻繁に取材を受け、繊細なつくりの食器類が感動を持って受け止められているという。特に笏谷石製のビアマグは、石とは思えない薄さや軽さ、水にぬれると美しい青色に変化する風合いに驚く客も多いそうだ。

 将来的には越前焼なども店舗で使っていきたいという荒井さん。「ものづくりに対するひたむきさや、良いものの価値を残していく姿勢が福井の誇れるところだと思う。福井のもの、心とドイツをつなぐ架け橋になれれば」と話している。

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