【論説】関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)運転差し止め訴訟の控訴審で名古屋高裁金沢支部(内藤正之裁判長)は、一審の福井地裁判決を覆し、関電に運転を認める判決を下した。一審判決は地震対策に「構造的な欠陥がある」と断じたが、控訴審判決では関電の主張を全面的に受け入れた形だ。

 運転差し止めの仮処分では、これまで高裁決定は4件あり、うち広島高裁は昨年12月に四国電力伊方3号機の運転を禁じた。今回の判決で高裁レベルでは国策を後押しする流れが強まったといえよう。30件以上に上る係争中の原発訴訟にも影響が出そうだ。

 差し止め訴訟は、仮処分を求める訴訟とは違って、判決が確定しなければ差し止めにはならず、関電は今春、3、4号機を相次いで再稼働させている。運転が容認されたからといって、不断の安全対策が求められるのは当然だ。今夏に実施予定の高浜、大飯2原発を対象にした総合防災訓練や、モデル事業として行う避難道路の改修なども国が前面に立って実効性の高いものにしていく必要がある。

 控訴審で最大の争点となったのは耐震設計の目安となる揺れ「基準地震動」が妥当かどうか。大飯原発の地震対策を審査した元原子力規制委員長代理の島崎邦彦氏が「過小評価になっている」と証言。これに対し内藤裁判長は「詳細な調査に基づき、震源断層の長さ、幅などを保守的に評価している」などとする関電の主張を認め、「過小であるとはいえない」とした。

 一審判決で「福島原発事故のような事態を招く具体的危険性が万一でもあれば、差し止めが認められる」としていた審査過程の「判断枠組み」に関して、控訴審判決は新規制基準に違法、不合理な点はないとし「原子力規制委員会の判断にも不合理な点は認められず、発電所の危険性は社会通念上無視しうる程度にまで管理されている」とした。火山灰対策や使用済み核燃料なども同じ論理を繰り返すにとどまった。

 原告の住民側は、島崎氏の証人尋問で「歴史的な一日」と評するなど、流れを引き寄せたかに見えた。しかし、その後、専門家らの尋問を求め弁論再開を5度申し立てたが、いずれも認められず結審。この段階で今回の判決は予想されていたといえる。

 結局、最高裁が1992年の四国電力伊方原発行政訴訟判決で示した国の裁量権、国や電力事業者の立証責任といった考え方を踏襲した格好だ。原発廃止は可能としながら「もはや司法の役割を超える」と裁判所として科学的判断を回避したことは禍根を残さないか。

 一審判決は原発から250キロ圏の原告人を適格とするなど確かに注目すべき判断だったが、使用済み核燃料事故まで想定した辺りは福島事故を感情的に捉えた印象が拭えなかった。一方、高裁判決は規制委などの専門性に重きを置いた。ただ、その規制委が絶対の安全を保証したわけではないとした経緯がある。「安全」の過大評価は禁物だ。

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