福井県福井市が募集している認知症の当事者の声。仕事や家族に対する不安の声もある=5月

 ただ、家族と一緒だと、本人が伸び伸び振る舞えないという指摘もある。「認知症の人と家族の会」(本部・京都府京都市)の鈴木森夫代表理事(福井県敦賀市)は「本人は家族に気を使い、遠慮がちになる傾向がある。何かやろうとしても、家族は『この人はこんなことできません』と先回りする。結局本人もそれに合わせてしまう」。そしてできないことが増えていく。福井市のあるケアマネジャー(44)は、認知症の人から言われた言葉が今も忘れられない。「あなたたちは私たちが失敗する権利を奪っている」

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 「バスの停留所が分からなくなってきた」「仕事ができなくなって絶望した」「お金のことを考えるとノイローゼになりそう」「もう死にたくなっちゃう」

 今年3月に福井県自治会館(福井市)であった若年性認知症の山田真由美さん(58)=愛知県名古屋市=の講演の後、山田さんを含む当事者6人がテーブルを囲んだ。日頃の悩みを打ち明けた後は「なるべく楽しいことを考えようよ」「人より忘れっぽい病気ぐらいに思おうよ」「次にできなくなることを考えても仕方ない」と励まし合った。

 「私なんて字も書けなくなっちゃった。それなのに、全国で講演してるんだよ。偉いと思わない?」。山田さんの冗談に、参加者は「偉い偉い」と拍手をしながら笑った。会場にいた吉田さんは、日頃の集いとは違う参加者の表情に涙を浮かべた。「あそこまで自分の言葉で、自分のことを率直に語っている姿を見て驚いた。当事者同士が遠慮なく安心して話せる場をつくっていければ」と話す。

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