【論説】宇宙航空研究開発機構(JAXA)の探査機はやぶさ2が6月27日、目標天体の小惑星「りゅうぐう」上空に到着した。今後、岩石採取などの活動が本格化する。地球から約3億キロのかなたで繰り広げられる科学技術の壮大なドラマに関心を寄せたい。

 はやぶさ2は、相次いでトラブルに見舞われた初代はやぶさの教訓から、さまざまな改良が加えられた。ポイントになったのは宇宙の旅を支えるイオンエンジン。今回の3年半がかり、32億キロに及んだ往路での動きは極めて安定していた。

 りゅうぐうは地球や火星の軌道付近を通り太陽の周りを回る。地球衝突の可能性もあり監視が必要とされるが、距離的には比較的、探査機を接近させやすいとして目標に選ばれた。ただ、将来的に探査対象となり得る小惑星はりゅうぐうより遠いものが多く、イオンエンジンの技術確立は宇宙探査に大きく貢献する出来事になる。はやぶさ2は技術的には、既に大きな成果を残したといっていい。

 もちろん、はやぶさ2の探査の本番はこれから。はやぶさが調べた小惑星イトカワは岩石質だったが、りゅうぐうは有機物や水を含む可能性が高い「C型小惑星」に分類される。生命の起源につながる新発見がもたらされるかどうか、世界が注目している。

 成功の鍵は、今まさに行われているはずの、りゅうぐうの精密観測が握る。はやぶさ2プロジェクトマネジャーの津田雄一JAXA准教授は、山根一眞氏の著書「『はやぶさ2』の大挑戦」で、岩石採取などは事前の細かな計画立案ができなかったと明かしている。りゅうぐうの自転周期は7時間38分(同書)だが自転軸が不明だったため。形状もほぼ球形とみられていた。

 自転軸が垂直に近く、形はコマ型だと判明したのは、はやぶさ2が接近し、最新情報が入手できてから。今後の観測で障害となる事象はないか、通信状態はどうかなどの確認を進め、岩石採取地点や小型着陸機の放出地点などを決定していくことになる。

 宇宙開発は急速に身近になりつつある。福井県では県内の技術を生かした超小型人工衛星「県民衛星」のプロジェクトが進んでいるし、北海道の宇宙ベンチャー「インターステラテクノロジズ」は、6月末の打ち上げには失敗したが、ロケット開発を継続している。

 これらは、目に見える成果がなかなか得られないこともあるだろう。失敗を繰り返す経験から技術を前に進め、それがやがて高いレベルに到達する。効率性だけでなく、長期的視点での挑戦が欠かせない。

 はやぶさ2についても、岩石採取により太陽系の成り立ちにかかわる物質に迫ることができれば、科学的意義は歴史的に偉大なものになる。一方、未知の環境に遭遇、当初目的が果たせなかった場合でも、その状況下に突入したこと自体が人類の新たな体験になるはずだ。地球帰還予定は2020年末。持ち帰ってくる大きな土産を楽しみにしたい。

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