【論説】「移民政策とは異なるもの」とわざわざ断りつつも、外国人労働者を最長で10年間も就労させることは「移民」にほかならないのではないか。それでいて「家族の帯同は基本的に認めない」のでは人道上、大いに問題があるだろう。

 政府が閣議決定した「骨太方針」には、外国人労働者の受け入れ拡大に向け、新たな在留資格を認める方針が盛り込まれた。狙いは深刻な人手不足の解消としている。

 少子高齢化、人口減少による慢性的な労働力不足が叫ばれる中、現状で外国人労働者の4割を占める留学生や技能実習生の問題点と合わせ、どう受け入れ、どう共生していくか、中長期的な視点が欠かせない。

 ■農業など5分野を想定■

 新たな在留資格は、国内だけでは人手を確保できない分野に限定するとして、具体的に農業、建設、造船、宿泊、介護の5分野を想定。業界ごとの技能試験や日本語能力試験などで一定水準を満たすことを要件とし、在留期間の上限を通算5年としている。

 技能実習の経験者は試験が免除され、最長5年間働いて新資格に切り替えれば、計10年間就労できることになる。

 問題はそれだけの期間を日本で働きながら家族の帯同が認められないことだ。ただ、骨太方針には「一定の試験」を条件に帯同を認めることにも触れているが、あくまで「検討する」の段階。移民政策に対する与党内の根強い反対の声を意識したのだろう。専門家から「家族との別居を強いるのは人権問題だ」との批判が上がるのも当然だ。

 ■不当に扱われる実習生■

 2017年10月時点の外国人労働者は約128万人。前年比18%の大幅増で過去最多を更新した。在留資格別では永住者や日本人の配偶者などが約46万人、留学生アルバイトと技能実習生が各約26万人、弁護士や研究者などの専門・技術職は約24万などとなっている。

 政府はこれまで原則、専門・技術分野の人材に限定し、今回単純労働者の受け入れにかじを切ったとしているが、実際には留学生や実習生の多くが低賃金の単純労働に従事している。

 留学生の場合、労働時間は週28時間に限定されている。ただ、掛け持ちをすればそれ以上働くことも可能で、留学を偽装し「出稼ぎ」目的で来日するケースが急増しているという。

 技能実習生を巡っても、違法な給与不払いや長時間労働が横行するなど、不当に扱われる例も後を絶たない。労災死も雇用者全体の比率の2倍以上だ。

 ■自国の発展で先細りも■

 政府は、新資格を盛り込んだ入管難民法改正案を、早ければ今秋の臨時国会に提出し、25年までに50万人超の受け入れを見込んでいるが、実習生制度はスタート25年を経てもなお多くの問題をはらんでいる。まずは、実習生制度を抜本的に見直すのが先ではないか。

 08年のリーマンショックでは、多くの派遣労働者が雇い止めに遭い、「派遣切り」が社会問題になった。今度は外国人労働者が「雇用の調整弁」になる可能性も否定できない。

 ここに来て、中国からの労働者数の伸びが頭打ち化してきている。中国国内の経済発展に伴い、日本で働くメリットが少なくなってきているためという。前年比40%増となったベトナム人労働者は、政府が外貨獲得のため積極的に送り出しているからだが、これも自国の発展で将来的には先細りとなるだろう。

 企業は、外国人労働者を「安価な労働力」としてしか見ていないならば、早晩日本が働きに来てくれない国になることを肝に銘じるべきだ。

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