機体内部に設置したカメラで捉えた高度約2万5千メートル地点の画像。熱帯魚が“宇宙旅行”を楽しんでいるよう(岩谷技研提供)

 気球で“宇宙旅行”へ―。大型のガス気球(風船)を使う成層圏までの有人飛行実現に向け、ベンチャー企業の岩谷技研社長の岩谷圭介さん(32)=北海道=らのチームが、沖縄県宮古島市で熱帯魚を載せた機体を打ち上げる実験に挑戦した。高度約2万5千メートルの飛行を終え帰還した熱帯魚は元気な状態を維持しており、有人飛行の前段階として生物を載せた初めての実験は成功。岩谷さんは「大きな一歩を踏み出せた」と話し、目標とする2022年の有人飛行の実現へ情熱を注いでいる。

 岩谷さんは、気象観測などに使われる気球にカメラを搭載した機体を打ち上げ、成層圏から見える宇宙の撮影を、12年に国内で初めて成功させた。福井新聞社が展開する「ゆめ つくる ふくい」プロジェクトで福井高専生と福井新聞社記者が昨年10月、宮古島市で打ち上げた「スペースバルーン」も、岩谷さんの全面的な協力で高度約3万メートルの成層圏での撮影に成功した。

 岩谷さんはこれまでに100回以上の打ち上げ経験があり、この実績を生かして成層圏までの有人飛行を目指す「ふうせん宇宙旅行」プロジェクトに取り組んでいる。

 実験に使った機体は、宇宙服のヘルメットに使われるポリカーボネート製の一辺45センチの立方体。重さは6キロ弱で、内部に熱帯魚を入れた水槽を設置した。21日午前7時に宮古島市北部から打ち上げ、機体が高度約2万5千メートルに達したところで、気球と機体を切り離してパラシュートで降下。打ち上げから約3時間後、沖合約30キロの地点で機体を回収した。

 打ち上げから回収まで「ほぼ計画通り」と岩谷さん。高度2万5千メートルに到達するまでには、気温がマイナス70度以下になる地点もあるが、機体内の温度変化は最大で2度ほどだったという。スタッフの狩野英樹さん(53)=東京都=は「機体に取り付けたカメラの映像では熱帯魚に異状は見られず、宇宙旅行を楽しんだようだ」と声を弾ませ、岩谷さんは「気球を使った宇宙旅行が現実として見えてきた」と手応えを語った。

 一方で、宇宙旅行実現までにまだ課題は多い。5人程度が乗り込める重さ約1トンの機体を作る計画だが、この機体を飛行させるには今回使用したゴム製の気球では困難という。狩野さんは直径50メートル規模の気球を開発する必要があるとし、「どのような素材が適しているか検討したい」と話す。機体も少しずつ大型化して実験を重ねる必要があるほか、人間が乗る場合の安全対策も重要という。

 今秋ごろには新たな実験を予定しており、一歩ずつ着実に課題を解決していく考え。岩谷さんは「多くの人に安全に成層圏から見える宇宙の景色を楽しんでもらえるようになれば」と話している。

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