福井地震で落ちてきた二宮金次郎像を見上げる三井延子さん=福井県坂井市兵庫小

 バレーの仲間が、泣きながら集まってきた。涙でぬれた目の周りや口や鼻が、土で真っ黒になった顔を見合わせ「よかったね、すごい顔だね」。泣き笑いしながら、抱き合って無事を喜んだ。

 当時、同校と兵庫小は併設されていた。小学4年の妹は校内で踊りの練習をしていたはず。つぶれた校舎へ走った。余震は続いていたが、残骸の山に登っては柱を引っ張りだして下りる、というようなことを繰り返した。

 「今助けてやるぞ」。近所の男衆十数人が走ってきた。屋根板をはがし、柱を取り除いてくれた。一人、また一人と救い出され、ついに妹の姿も。白いブラウスに血がにじんでいたが元気だった。無我夢中で抱きしめた。

   ■■   ■■

 児童生徒11人と、女性教諭1人が校舎の下敷きになり亡くなった。数日後、合同葬が営まれた。女性教諭は産後間もなかった。赤ちゃんも自宅で亡くなったと聞いた。

 学校は休みになった。子どもも大人を手伝い、それぞれの家の後片付けに明け暮れた。9月に入り、授業が再開された。倒壊を免れた校舎を交代で使い、時には青空教室で学んだ。がれきから掘り出した教科書を使った。「授業が受けられる。頑張ろうと前向きだったと思う」。外での授業は風が心地よかった。

 今月5日に兵庫小を訪問した。今は中学は併設されていない。地震に遭った場所を訪れるのは約70年ぶりだった。校門付近はすっかり変わっていたが、二宮金次郎像は当時のものらしかった。「こんなに小さかったっけ」。あの日の光景が目に浮かんだ。

関連記事