男子50キロ競歩 3番目でゴールし、喜ぶ荒井広宙=リオデジャネイロ(共同)

 リオデジャネイロ五輪の陸上競歩男子50キロの荒井広宙(あらい・ひろおき)は、機械いじりが好きで入った高校で競歩にのめり込んだ。世界の舞台での活躍を願い、支えてくれた母が昨年他界。感謝の思いを力に、リオデジャネイロ五輪行きの切符を手に入れた。

 「物を作るのが好きで、部屋からはしょっちゅうモーターの音が聞こえていた」。父親の康行さん(67)は振り返る。電気機器関連の仕事に就こうと、長野県中野市の中野実業高(現中野立志館高)に進んだ。

 中学時代の延長で選んだ陸上部は県内の強豪として知られ、練習は厳しかった。そこで出会ったのが競歩だった。1学年上にいた藤沢勇=リオ五輪、競歩男子20キロに出場=に刺激され、「高校から始める人が多く、まだ大きな差がついていない」と2年から始めた。

 福井工大に進み、卒業後は「2年だけなら面倒を見る。結果が出なかったら諦めるように」という実家からの仕送りを頼りに競技を続けた。

 実績を重ねていた2014年、母の繁美さんががんを患う。活躍を喜び、「五輪、行ってほしいね」と期待を膨らませていたが、15年11月に63歳で亡くなった。

 五輪の切符が懸かった今年4月の日本選手権。応援に駆け付けた康行さんの手には繁美さんの遺影があった。「やってやろうという気持ちになるかと思って」。沿道から身を乗り出し見せた。「気合が入った」という荒井選手は2位に入り、五輪行きを決めた。

 家族に支えられて歩んだリオへの道。たどり着いた大舞台で、恩返しを誓った。

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