【論説】働き方改革関連法案が参院厚生労働委員会で可決され、29日の参院本会議で成立見通しとなった。焦点だった、高収入の一部専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」については、実のある議論がなされないまま。高プロによる長時間労働や過労死を防ぐ施策を、国会は具体化できなかった。導入は2019年4月が見込まれる。運用に慎重さが求められるのはもちろんだが、労働者を守るための制度見直しが必要だ。

 高プロには、長時間労働規制の抜け穴になるとの抜き難い不安が寄せられている。ただ、労働者側のメリットも全く考えられないわけではない。出退勤時間を自由にできる可能性があり、効率よく成果を上げれば時短につながるケースも考えられる。

 法案には労働者への配慮も書き込まれている。労働時間規制の対象外とはいえ、企業側には健康管理のために課されている義務がいくつかある。制度の対象にするには本人同意が必要な上、申し出があれば対象から外さなければならず、そのことで解雇など不利益な取り扱いをしてはならないことも明記されている。

 しかし、労働者にデメリットが生じた場合にどう救済されるか曖昧で、企業が講じなければならない健康配慮にも抜け道があるなどの点はやはり問題である。

 高プロ対象者は、高度な専門知識を有した人材に限られているとはいえ、常に効率よく成果を上げられるかといえば、そうでないことも多々あるはずで、その場合、必然的に長時間労働になるだろう。法案が求める「本人からの苦情対応」に企業側が動く保証はあるのか。健康配慮については、例えば「2週間以上の連続休暇」を制度化していれば、24時間以上休息なしで働かせることも条文上はできてしまう。

 政府はこうした当然の疑問になぜ答えようとしなかったか、理解に苦しむ。労働者保護の理念や方策を盛り込む修正を図れば、かなりの不安が解消されたはずなのである。むしろ、安倍晋三首相や加藤勝信厚労相が同じ答弁を繰り返し、建設的な議論を避け続けたことで不安が増幅された面がある。政府は、経済界の都合ばかりを優先したとの見方に反論できるのか。

 法施行後は、制度が過労につながっていないか、導入した企業の監督指導強化が労働行政当局に求められる。厚労省は、労働基準監督署の人不足を早急に解消する責務を負った。

 高プロは、あくまで長時間労働規制と同時に法整備されるもので、労働者保護の思想に貫かれていることが本来の姿だ。しかし、法案は現時点で、それを担保できていない。年収要件や職種などが将来改定され、適用対象が際限なく拡大される懸念すらある。政治には多くの宿題が課せられたままであり、不断の見直しが必要だ。高プロによって、万が一にも過労死が引き起こされてしまったら、政府は無限の責任を負うことを肝に銘ずるべきである。

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