【越山若水】江戸川柳に皮肉たっぷりの句がある。「四百づつ両方へうる仲人口」「仲人口七百五十ぐらいまで」。お察しの通り、どちらも慣用表現「嘘(うそ)八百」を踏まえている▼説明するまでもなく、「嘘八百」とは何もかもがでっち上げということ。「八百」は「江戸八百八町」「大坂八百八橋」のように、数が多いことの例えである▼江戸時代、仲人の礼金は持参金の一割が相場。最初の句、口八丁の仲人は双方に四百ずつうそを並べる。次の句の仲人はうそも七百五十ぐらいは…と甘言を弄(ろう)する▼仲人のうそは何よりも仲介料が目当て。結婚というおめでたゆえ、つけ込む隙も生まれるのだろう。今年の冬も似たような事例が発生した。成人の日に予約した晴れ着が届かなかったトラブルである▼着物の販売・レンタル業「はれのひ」の元社長が詐欺容疑で逮捕された。事前に支払いを済ませていたが直前に営業停止。振り袖が着られなかった新成人は2千人に上った▼ところが元社長の逮捕容疑は顧客をだましたことではない。約1億5千万円の特別損失を隠し、粉飾した決算書類で銀行融資を詐取した疑いだという▼資金繰りが悪化しながら、嘘八百を並べ立て平然と契約を続けた。揚げ句に新成人の“晴れの日”を台無しにした。なのに晴れ着被害の詐欺立証は難しく、泣き寝入りになる可能性が高い。何とも釈然としない。

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