大森房吉の新著を発刊した上山さん=東京都内

 福井県福井市出身で明治、大正期を代表する地震学者大森房吉(1868~1923年)にスポットを当てたノンフィクション「地震学をつくった男・大森房吉―幻の地震予知と関東大震災の真実」が6月21日発刊された。著者の上山明博さん(東京)は「地震の生き神さま」とまでたたえられた大森の業績を知る人がほとんどいない現状に疑問を抱き、丹念に調査したという。新著に込めた思いや狙いを聞いた。

 ―前著「関東大震災を予知した二人の男 大森房吉と今村明恒」(産経新聞出版・2013年)に続いて、大森を取り上げたのはなぜ。

 「(前著を)書き上げた後に、大きな疑問が残りました。国民のみならず、世界からたたえられ、ノーベル賞候補にもなった大森を、今知る人がほとんどいないのはなぜかと」

 「国会図書館や東京大学地震研究所に通い、大森の生涯と研究成果を5年かけて調べて書き上げました」

 ―新著の構成と、調査で分かったことは。

 「近代地震学が地震大国で誕生した理由と、その礎をほぼ一人で築き上げた大森の業績を追いました。そして関東大震災(1923年)の発生を機に、大森は予知できなかった無能な地震学者と嘲笑され、研究成果は過小評価されるようになったのです」

 「しかし調査を続けると、実は東京に大地震が起きることを予知していたと考えられる大森の研究論文を発見しました。しかも震源域が相模湾沖であることを示唆する地図も含まれていた。次にどこで起こるかを誰よりも正確に予知していたのです」

 ―新著で伝えたいことは。

 「大森は関東大震災の直前、地震予知の研究に専心していました。その研究内容も詳しく紹介しています。福井地震70年の節目に、震災の惨禍を再び繰り返さぬよう、一人一人ができることをやるきっかけになればと思います。大森の人間像を知り、日本のどの地域でもいつか必ずやってくる大地震に備える一助になればうれしいです」

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 「地震学をつくった男・大森房吉―幻の地震予知と関東大震災の真実」は青土社刊、価格は1900円(税別)。「地震学の黎明(れいめい)」「姿なき研究機関」「東京大地震襲来論争」「関東大震災」「地震学の父の死」「関東大震災の真実」の全6章。

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