【論説】カナダで開かれた主要7カ国首脳会議(G7サミット)は、トランプ米大統領による保護主義政策、鉄鋼の高額関税などの貿易問題に注目が集まった。その陰に隠れた印象があるが、もうひとつ地球的な重要課題についても協議した。

 それは増え続けるプラスチックごみが海洋を汚染し、生態系や漁業の持続可能性を著しく阻害している問題である。G7では海洋保護に向け各国が削減を促進する「海洋プラスチック憲章」を提唱した。

 英国、フランス、ドイツ、欧州連合(EU)などはもちろん憲章に署名した。ところが日本と米国は署名を見送った。消極的な姿勢に国内外から失望感が広がっている。

 ■毎年800万トン海へ■

 プラスチックは分解されにくい。波や紫外線の影響で5ミリ以下の微小なマイクロプラスチック(MP)となり、海中の有害物質を吸着しやすくなる。これを魚介類が食べると、食物連鎖で多くの野生動物だけでなく人体にまで危険が及ぶ。MPは今や南極から北極、世界のあらゆる海域に拡散している。

 また廃棄されたプラごみで、動物が命を落とす事例も後を絶たない。タイではクジラの胃から80枚ものレジ袋が見つかった。中米コスタリカではストローが鼻に詰まり衰弱したウミガメが救助された。

 国連の推計によると、2014年のプラスチック生産量は3億トン、少なくとも毎年800万トンが海に流出している。プラごみの発生量は中国やインドネシアなど東南アジアが上位を占める一方、1人当たりの1~3位は米国、日本、EUである。

 ■欧米では禁止の動き■

 プラごみを減らし海洋汚染を防ごうと、G7が提唱したのが「海洋プラスチック憲章」だ。各国は産業界と協力し、30年までに全てのプラスチックを再利用、または代替可能なものにすることを目指す。

 しかし日本政府は署名を見送った。「趣旨には賛同するが、国内法が整備されておらず、社会にどの程度影響を与えるかも分からない」というのが理由。日本の消極的な姿勢に落胆の声が上がり、米国に遠慮したとの臆測まで流れた。

 既にEU委員会では、ファストフード店などで提供される使い捨てストローやスプーン、フォークなどを禁止するほか、食品や飲料のプラ容器の回収費用を製造者に負担させる新ルールを加盟国に提案した。

 英国にも同じ動きがある。署名を拒否した米国でさえ、シアトルでは7月からストローやスプーン類を使用禁止にする。スターバックス・コーヒーや野球のセーフコ・フィールドなども率先協力するという。

 ■海洋国家の役割重い■

 もう随分と昔、越廼村(現福井市)の越前海岸で漂着物調査をしていた人を取材した。発生元は日本だけでなく、朝鮮半島や中国のものも多かった。

 当時、問題になっていたプラスチック製の微細なレジンペレットも大量に打ち上げられていた。海流に乗ってやって来たもので、まさに海はつながっていると思い知らされた。

 日本では今国会、議員立法で改正海岸漂着物処理推進法が成立した。民間企業に洗顔料や歯磨きに使うMPの抑制を求めたが、プラスチック製品の禁止までは至らなかった。

 ペットボトルやアルミ缶、プラスチック廃材など日本のリサイクル率は80%前後と高率を誇っている。環境関連技術も先進的で、海洋国家でもある。地球環境にもっと積極的な姿勢、リーダー的な役割を世界は期待している。

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