実家近くで目の当たりにした当時の状況を「地獄絵図だった」と話す布目鈴子さん(右)。隣は夫の輝雄さん=福井県永平寺町松岡吉野の八幡神社

 揺れは続き、家の前の砂利道がパカッと割れる。「割れてくっついて、割れてくっついて。経験したもんでないと想像できんと思う。あれは本当に恐ろしい」。足を地面に着けたくなくて、ウサギみたいに跳ねて逃げ回った。

 出かけていた父親が帰ってきて「何を持ってるんや」と言われた。気が付くと弁当箱を握りしめていた。ご飯は砂ぼこりで真っ黒。放す余裕もなく逃げていたらしかった。

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 母親は田んぼから泥だらけで帰ってきた。近くの川へ釣りに行っていた小学6年の弟は、馬の背のように堤防にしがみついて助かったらしい。姉も福井から歩いて帰ってきた。

 ただ、仲が良かった隣のおばあちゃんは家の下敷きになった。小さな「助けて」の声に気付いた父親が助け出すころには、辺りは暗くなっていた。「命あるぞ、大丈夫やぞ」。父親の呼び掛けもむなしく事切れた。

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 終戦から3年、復興の途上にあった福井県嶺北北部を襲った福井地震は、6月28日で発生から70年を迎える。被災した世代が高齢化し少なくなる中、2万5千人余りもの死傷者が出た大災害を、後世にいかに伝えていくかは大きな課題だ。体験者の証言から「6・28」を語り継ぐ。

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