【論説】自民党が参院に提出した公職選挙法改正案は、ご都合主義が過ぎるとしか言いようのない案だ。参院選の「1票の格差」是正や「合区」対策として定数を6増するとしているが、党内の不満解消を優先させたものであり、抜本策とは到底言い難い。

 公明党が賛成する方向で、会期延長により今国会で成立する見通しだという。次期選挙で合区導入が想定されてきた福井県は歓迎できるが、一部野党が反発するように定数増が「身を切る改革に逆行する」のも否めない。何より参院の果たすべき役割は何か、そのための選挙制度がどうあるべきなのかに踏み込まない小手先案では国民理解は得られない。

 自民案は、議員1人当たりの有権者数が最も多い埼玉選挙区の定数を2増。「鳥取・島根」「徳島・高知」の合区選挙区を継続する一方、比例代表で事前に定めた順位に従って当選者を決める「拘束名簿式」を導入し、合区対象県で選挙区に擁立できない県の候補者を特定枠に載せて救済を図る狙いがある。

 埼玉の定数を増やすことで、2016年の前回選挙で福井との間で3・08倍だった格差が3倍未満に抑えられるという。全国知事会も示しているように、国民の代表である議員の数を増やすこと自体は一概に否定されるものではないだろう。ただし、理由の説明は欠かせない。埼玉で激戦にさらされる公明党への配慮だとしたら、お手盛りと言わざるを得ない。

 問題は合区の扱いだ。自民党は大都市圏への人口集中が一向に解消されない中、「人口が減る地方の声も国政に反映させる必要がある」として、各都道府県から1人の議員が選出可能な憲法改正案をまとめている。相次ぐ政府の疑惑や不祥事で改憲論議が進まず、来年の選挙に間に合いそうにないことを理由に公選法改正にかじを切ったが、整合性を一体どう図るのか。

 かつて自民党が否定した拘束名簿式の復活も唐突で選挙制度が複雑なものになりかねない。1人も議員を出せなくなる鳥取や高知の危機感を受けてのことだろう。だが、15年の公選法改正の際、19年の参院選に向けて付則に明記した「選挙制度の抜本的な見直しを検討し、必ず結論を得る」に背くものだ。

 参院は「良識の府」「再考の府」と称されてきた。自民党出身の伊達忠一参院議長が、各派の代表者懇談会で同党案に反対が出ると、協議を打ち切ってしまった。衆院と同様の対立構図が持ち込まれ「衆院のカーボンコピー」と揶揄(やゆ)される現状をさらした形だ。

 民主主義の土台ともいえる選挙制度は、幅広い合意が望ましいのは言うまでもない。参院の独自性や、あるべき姿を映した制度をつくるべく、懇談会に議論を差し戻すべきだろう。参院選挙制度改革を巡っては、全国9ブロックの比例代表制や11ブロックの大選挙区制など、材料とすべき案もある。自民党案の再考を促したい。

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