顔を左後方に向けた状態から真っすぐに向き直すと、左目の視界の端に白い光のようなものが見えます。横3センチ、縦20センチ程度の大きさで、6〜7年前から見えだしました。飛んでいる蚊のような異物も見えます。痛みはなく、涙が出るようなこともありません。視力は両眼とも1・0以上です。網膜剥離など左目に異変が起きているのでしょうか。 (福井市、70歳男性)

 【お答えします】立花学・福井県済生会病院眼科副医長

 ■生理的飛蚊症や光視症の疑い

 まず「飛蚊症(ひぶんしょう)」が考えられます。

 外部から我々の眼に入る光は、眼の表面から角膜、水晶体、そして硝子体という網膜に接する透明なゼリー状の物体を通って網膜へと到達し、網膜が受け取った光信号は電気信号に変換されて脳に伝わります。水晶体の混濁が原因となって生じる視力低下や羞明感は「白内障」として知られていますが、より眼の奥側に位置する硝子体に混濁等の異常が生じ、蚊が飛んでいるかのように見える「飛蚊症」はあまり知られていません。

 硝子体は基本的に透明な物体で光を遮ることはありませんが、加齢や紫外線によって生じた活性酸素などによるストレスが原因で、部分的な混濁を引き起こすことがあります。この混濁が光の経路を部分的に遮ることによって、蚊が飛んでいるように見える症状が「生理的飛蚊症」です。

 ある程度決まった場所を中心に眼の動きに合わせて一緒に動くことが特徴的で、飛蚊症を訴える人のほとんどがこの生理的飛蚊症です。現在、有効な治療方法は確立されておらず、基本的に経過観察となりますが、時間とともに見え方に慣れて気にならなくなることが多いようです。

 また、硝子体は前述の加齢やストレス等によって体積が縮小する傾向にあります。この際に硝子体が接している網膜を前方へけん引すると、光の刺激と勘違いした網膜が脳へ光刺激を伝えてしまうことがあり、このような症状を「光視症」と呼びます。

 眼球運動に伴い同じ場所に出現することが多く、硝子体が網膜から剥離する「後部硝子体剥離」が進行すると落ち着くことが多いですが、硝子体と網膜の癒着が強ければ数年間にわたって症状が持続することもあります。また後部硝子体剥離によって飛蚊症が生じることもあります。

 ■精密眼底検査受けて

 しかし時に、硝子体の引っ張る力によって網膜そのものに穴が開いてしまう「網膜裂孔」や、更に開いた穴から網膜が剥がれていく「網膜剥離」へと進展することがあります。網膜剥離は放置すると失明する可能性のある大変危険な状態で、進行すると視力低下や視野の欠損を引き起こしますが、初期の症状としては前述のような飛蚊症や光視症を訴えることが多いです。

 相談者は、数年前から飛蚊症と光視症を自覚しておられるとのことなので、生理的飛蚊症や光視症の疑いが強いです。ただ、網膜裂孔のような網膜剥離の前駆症状である危険性も否定できませんので、眼科を受診し精密眼底検査を受けることをお勧めします。

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