10年ほど前、人間ドックで右目に「加齢黄斑(おうはん)前膜」があるとの診断を受けました。自覚症状がなかったので、治療はしませんでしたが最近、障子の枠や格子状の物がゆがんで見えるようになりました。左目は正常に見えます。効果的な治療法などあれば教えてください。(福井県坂井市、70代女性)

 【お答えします】棚橋俊郎 福井県済生会病院 眼科主任部長

 ■有効な薬なく病状により手術

 眼球内には網膜という光を感じる膜があります。網膜の中心には黄斑という精密な部位があり、そこで文字など細かな物を認識していますが、黄斑の前に薄いセロハン状の膜が形成される病気を黄斑前膜といいます。

 発症すると、物の形がゆがんで見えます。黄斑前膜の多くは加齢により自然に発症しますが、網膜裂孔、ぶどう膜炎、網膜剥離の手術後などに関連して発症することがあります。眼鏡では矯正することができず、有効な食べ物や薬もないので、手術が必要になります。黄斑前膜は、眼底検査や光干渉断層計(OCT)により診断します。

 早期に手術をすると、視機能の回復に効果があると思われますが、放置しても失明する病気ではなく、合併症が全くないわけでもないので、手術のタイミングについては一概には言えません。目安としては視力が0・7以下に低下した時と思われます。また緑内障、白内障、糖尿病網膜症など目の他の病気が合併していないかも重要です。

 ■改善の程度は個人差あり

 手術はほとんどの場合、局所麻酔で行います。非常に細かな操作が要るので、手術顕微鏡を使用して何倍にも眼内の状態を拡大し、精密な手術を行います。黄斑前膜はピンセットで直接つかんで網膜から剥離し除去します。最近では手術機械が進歩し27ゲージという太さがわずか0・4ミリの非常に細い器具で、安全に短時間で手術ができます。

 水晶体が濁る白内障がある場合や高齢の場合は、白内障手術を同時に行います。手術の合併症として網膜剥離や黄斑前膜の再発がありますが、頻度は少ないです。ただし緑内障を合併していると、緑内障が進行する可能性があります。

 手術によって視力の改善を期待できますが、程度には個人差があります。回復までの時間も1カ月以内の場合もあれば、1年ほどかかる場合もあります。また手術によりゆがみは減少しますが、全くなくなることは少ないです。なお発症から数年を経過していると、手術をしても改善には限界があります。まずはお近くの眼科で相談されることをお勧めします。

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