ついイライラが態度に出ていませんか?

 仕事の効率が悪い。上司から日常的に叱られる。同僚や部下から尊敬されていない。イライラした気持ちがつい態度に出る——。あなたの周りにこんな社員はいませんか。あるいはあなた自身の身に覚えはないでしょうか。

 私は心理カウンセラーとして企業や官庁での講演を年間300回以上、17年にわたって続け、大勢の方に心理カウンセリングも行っています。その経験から言わせてもらえば、人生においてなぜかうまくいかないことが、ある周期をもってパターン化して繰り返されるか、いつも似たようなシーンでつねにその人の身に起こるのは、潜在的には本人が望んでいるといえます。

 拙著『はじめての自分で治すこころの教科書』でも詳しく解説していますが、私はそれを「不幸ぐせ」と名付けており、ビジネスマンの出世に大きく影響しています。公的な機関や民間企業、組織など職場環境はそれぞれ違っていても、特にビジネスマンにはなぜか似たタイプの不幸ぐせが存在します。

 「出世したい」「お金持ちになりたい」「幸せになりたい」と口では言っていても、「変わらない」ことのほうが楽だと感じるのが、そういう人たちの特徴。今まで慣れ親しんできた習慣、言動、環境を変えるにはエネルギーが必要ですが、実は願望を実現するための行動に伴う痛みや苦労よりも、自分自身や周囲にできない言い訳をする。居酒屋で同レベルの同僚、または聞いてくれる部下を見つけて、愚痴を言い続けたり、重要な側面で自ら成果が出ない選択をしてしまったりする人生を心の底では望んでいます。

 不幸ぐせパターンにもいくつかあり、大きく4つにまとめられます。

 (1)完璧主義 (2)依存性 (3)対人過敏 (4)自己否定

 この不幸ぐせは意外に優秀な人間にも多く、これが原因で出世できないケースもあります。まず(1)完璧主義のケースを紹介しましょう。

 

 優秀な大学院を卒業して大手IT企業で課長職に就く48歳、Aさんです。効率をいちばんに考えている仕事人間のAさんからすると、時間は宝物。自宅にいてもそうで、帰るとすぐに入浴、その後の夕飯にはビールが欠かせません。ビールの在庫が切れていると不満がすぐに声に出るし、夕飯の支度が整っていないと機嫌が悪くなるのでAさんの妻は彼の思いに沿うようにといつも気を使っています。

 Aさんは“あるタイプ”の部下を育てるのが上手です。頭の回転が速く、何かを指示するとその先を見通して行動できる、自分と似たタイプの部下。反対に、時間にルーズで期限を守らない部下を見るとイライラしてしまいます。それがAさんの下に2カ月前配属となった部下Bさんでした。

 思うように成長しないBさんにいらだったAさんは先日、あまりの要領の悪さにとうとう、激怒して大声で怒鳴ってしまいました。それから1週間。Bさんは無断欠勤をしています。実は初めてではありません。これまで3人のうつ病を自分の課から出しているのです。

 Aさんは「なぜ、気持ちが弱くてすぐに休む部下ばかり来るのだろう?」と腹が立って仕方がありませんが、肝心なことに気づいていません、自分自身が「待てない上司」であるがゆえに部下が病んでいくことに。そして優秀な大学院を修了しているにもかかわらず48歳になっても課長職で昇進が止まっているのは、部長以上の役員たちが彼の能力については認めていても、マネジメント力は低いことを知っているからなのです。

■対人過敏、自己否定であるCさんの場合

 (3)対人過敏であり(4)自己否定の「不幸ぐせ」がある自営業の42歳独身男性Cさんのケースも紹介しましょう。

 彼は2年前までサラリーマンでしたが、現在は店舗デザインのコンサルタントとして独立しています。彼の口から出る言葉は「不況だから儲からない」「僕のセンスがどうして伝わらないのか」「期限までに仕上げる自信がない」という不満や愚痴ばかり。

 Cさんはお客の話を聞くのが営業だと思っているのでその持論のとおり、1日中ずっと誰かと会っていますが、売り上げ成績にはさっぱりつながっていません。セールスの場面も、ただの世間話をしているようにしか見えないのは、彼には自分という“軸”がないからです。相手のどこに自分が役立つのかを提案せず、相手が何を望んでいるのかを聴くだけで終わっています。

 さらに料金や契約等の決めごとを明確に打ち出さないために、クロージングができずに成約に至らないパターンを繰り返しています。

 Cさんは日頃から、他人から自分がどう評価されるのか、周りの噂が気になるため、つい“いい人”を演じてしまいあちらこちらで利用されてしまうタイプです。

 会社組織ではないものの、こちらも「出世」しないタイプです。他にあなたの部下で何かを指示された時に、「はい!」と勢いよく返事をするもののその業務しかしていないという人がいたら、それは能動的に仕事をする気持ちのない②依存性タイプかもしれなません。

 もし、部下やあなた自身がこのような不幸ぐせのパターンをもつ人は、どのような考え方や行動をしていくと良いのでしょうか。タイプ別にまとめてみます。

 (1)完璧主義タイプ

 白黒どちらかにすぐに結論が出ないと気が済まず、自分なりの価値観を強く持っていて、そのとおりに相手や状況が動かないとイライラするという特徴を持っています。

 こういう人は相手に変化を求める気持ちが強くなっていますが、何か不満があったときにそういうものだと考えられればストレスは減っていきます。そして時期を待つ。相手のために自分を変えるのではなく自分のために……と考えることがポイントです。

■指示されたこと以外はしない「依存性タイプ」

 (2)依存性タイプ

 このタイプは周囲が指示してくれる、こちらからアプローチしなくてものごとが進んでいくだろうと思っているので、言われたこと以上のことをしません。

 たとえばこのタイプに「計画を立ててください」とお願いした人は、その先を推測して計画は進んでいるだろうと期待しているのですが、何日かたって進捗状況を聞くと「課長から昨年の資料をいただいていないのでできていません」と平気な顔で答えます。

 つまり指示されたこと以外はしないので、そのことにがっくりきた上司や同僚はその人の能力以上の仕事を依頼しなくなります。結局ルーチンワーク以外はなくなるので、自分からまいた種でありながら「この仕事にはやりがいがない!」と言って依存タイプは辞めていくのです。

 “夢見る夢子ちゃん”にならないようにするには、「自分に何ができるのか?」「どういうふうに仕事や活動をすると周りは助かるのか?」を想定する思考・行動パターンに変えていけるかどうかがポイントです。

 (3)対人過敏タイプ

 対人過敏とは他人が自分をどう評価しているのかが気になるタイプです。誰からも悪口を言われたくないから噂が気になるのです。給湯室の前を通ると、そこでずっと話していたらしい社員たちの口がぴたりと止まる、それはきっと自分のことを言っていたに違いないと敏感になります。

 嫌われたくないという理由で、頼まれた作業は何でも引き受けますが、能力以上のことも多いため、それらすべてが中途半端……結局会社を休んでしまう、なんてことになり周囲を困らせます。決めることが苦手で自分軸がないため、「あなたはこれについてどう思うのか?」と聞いても周りの意見を優先します。

 このタイプは出世が遅く、ただ何となく人生を過ごして成果を得ることが少なくなりますから、本人とともに大切にしたいことの優先順位を書き出して、その順番で物事を大切にしていくともっとのびのびとした態度になり発想も豊かになることでしょう。

■自信がないので受け入れられない「自己否定タイプ」

 (4)自己否定タイプ

 おそらく以前に、自分はだめだと思う体験や兄弟などと比較される環境があったかもしれません。最近ではチャレンジをした過去がないので挫折もしていない、だから失敗が怖いからさらに挑戦することをしない、という負のスパイラルに入り込んでいる若手社員を多く見かけます。

 周りから褒められても自信がないので素直に受け入れられません。このタイプが育成という意味では、いちばん手を焼くかもしれません。他の人から見るとちゃんとできているのに、自分自身にOKを出さない、自己評価が低いのです。だから管理職試験やプロジェクトリーダーも引き受けようとしない。

 そういう場合は「誰と比較してあなたはできないと言うのか?」「そう思い込ませるようなできごとが過去にあったのか?」と聞きながら、客観的に自分を見つめてもらう機会を作ることから始めましょう。ダメだと思ってしまうルーツはなんだったのかに気づくことで、冷静に自分を理解し同僚や友人と対等な関係を築くことができるようになるのです。

 人間の性格はそう簡単には変えられるものではないけれど、考え方・受けとめ方(認知)や、知らずにやっている行動パターンをシフトチェンジしていくことで、身近に起こる現象がおどろくほど変わるものです。自分のことはもちろん、あなたが上司であれば、部下のこのようなパターンに応じて、特性を理解し適切な指導を行うことで出世にも良い影響を及ぼしてくるはずです。(神田裕子:心理カウンセラー)

■東洋経済オンラインの関連記事■
「仕事が遅すぎる人」に共通する残念な考え方
心が強い人は「ムダな考え」を消している
恵まれているのに「不幸だ」と感じる人の目線
■福井新聞ONLINEの関連記事■
隠れアスペルガー症候群は天才かも
コーヒーの飲み過ぎは何杯から?
突然死は40代男性が1番多い