山あいの集落にある子ども園では小浜市内の祖父母世代が保育を担う。親世代は安心して仕事に打ち込める。子どもの遊び場は豊かな森。継続的な植樹によって獣害で荒れた山は緑に。海沿いにリニア新幹線が走り、近未来の技術が自然に溶け込んでいる。

大野市の五番通り沿いの旧黒原書店が、大学のサテライトキャンパスとして生まれ変わる。周辺の空き家は学生のシェアハウスに。同書店向かいの空きビル1階は大野の名水を使った地ビールの醸造所、上階はシェアオフィス。通りは常に若者が行き交う。

河口の水位が低い日、特殊堤は電動で倒れて水辺空間が広がる。ウッドデッキにカフェ、県道沿いには蔵を改修した店が並び、住民と観光客が会話を楽しんでいる。三国港と福井市街地をつなぐ「水上バス」が通勤や観光の足として活躍している。

 ■小浜・上根来

 三セク「おばま観光局」職員 魚見栄美さん(40)

 ・祖父母世代が保育
 ・家族のような集落
 ・森を遊び場に

 関西の広告代理店で15年間働いた経験を古里の福井県小浜市で生かそうと、2015年春にUターンした。「まち全体が知り合いのようなコミュニティーの狭さ」をときに息苦しく感じる。だけど「人と人の距離の近さをプラスに変えて生活に融合させていくことが、これからの社会をよくするポイント」と信じている。

 例えば、増えていくリタイア世代が、保育の担い手として子どもたちの情操を育むまち。「祖父母がいない核家族の問題も、家族の単位を集落単位まで広げれば解決する。小さなまちだからこそ、それができる」と力を込める。

 空想の舞台は山あいの上根来(かみねごり)地区。過疎化で住民がいなくなったが、四季の移ろいが美しく、鯖街道の若狭の出入り口となる場所だけに可能性を感じている。森の中の子ども園でお年寄りと子どもたちが若木を植える光景をイメージしてみる。「世代を超えて自然の大切さを日々学ぶ子どもたちは、きっと環境に優しいまちをつくってくれる」。さらに「神秘的な観光スポットとしても打ちだしていけると思う」。

 山の恵みを受けた海に、今は姿を消しているサバの群れが泳ぐのが理想だ。

 ■大野・元町

 工務店経営 川端慎哉さん(41)

 ・まちなかに大学
 ・空き家に学生
 ・芝生の五番通り

 地元・大野のまちなかをもっと楽しく—。大工として腕を磨き36歳で工務店を立ち上げたとき、事務所の場所は中心市街地にこだわった。空き店舗や古民家をカフェなどにリノベーションする仕事をしながら、仲間と空き物件を活用したイベントを次々と企画している。「まちに若い人が増えると、単純に楽しいでしょ」。動機はシンプルだ。

 だから築110年超の元書店をそのまま生かし、県内外の大学が共有するサテライトキャンパスにするアイデアが浮かんだ。学生たちが長期滞在し「商店街の現状をリアルな教材」にして地域の未来を考える。「大野で自分らしく暮らす大人たちと、高校生が触れ合う講義もあるといい」。まちを出る前に多様な豊かさを伝えることが、Uターンにつながると思うからだ。

 通りを挟んだ空きビルは、小京都の街並みにアクセントを付けるため、モダンなデザインに。ビル内のシェアオフィスの家賃は低く抑え、若者が起業しやすくする。五番通りは、思い切って芝生にしてしまう。「夢を追う若者と県内外の学生たちが、通りを挟んでどんな相乗効果を生み出すか、考えるとわくわくしてきますね」

 ■坂井・三国

 「三國湊町家PROJECT」メンバー 倉橋宏典さん(37)

 ・特殊堤 可動式に
 ・おしゃれな水辺空間
 ・水上バスが活躍

 古里の坂井市三国町に目を向けたのは都市デザインを学んでいた大学時代、恩師の「お前がやらずに誰がやる」の一言だった。現在は福井市内に住んでいるが、“三国愛”は人一倍。歴史ある町家を改修して店舗などに再生するプロジェクトに奔走する。

 かつて北前船の寄港地として栄えた港町。九頭竜川河口の県道沿いには独特の建築様式「かぐら建て」の蔵が並び、対岸からは川、蔵、係留船の“三重奏”が望める。しかし、県道側に立つと、特殊堤(高さ最大約2メートル、延長約1・3キロ)が視界を遮り、「まちと川とのつながりが薄れている」。

 そこで、可動式の特殊堤の設置を提案する。「川は“三国らしさ”を引き出す一つの資源。水辺感があれば、もっと広がりが出ると思うんだよね」。好天の日にはコンクリート壁を倒して一帯に空間をつくる、という発想だ。

 三国は観光資源が豊富だが、入り込み客のほとんどは名の知れた東尋坊。「おしゃれな水辺と、風情のあるまちなか、そして東尋坊。これらの点を結んで回遊性が高まれば、新たな人の動きが生まれる。住民との交流も深まりそう」(栗原愛)

【写真説明】
集落の中心にある大樹が魚見さんの空想のシンボルになった=小浜市上根来
川端さんの空想の核となった旧黒原書店(左手前)と空きビルが面する五番通り=大野市元町
倉橋さんは川とまちの間にある特殊堤に着眼、水辺の演出を提案する=坂井市三国町北本町3丁目付近
山あいの集落にある子ども園では小浜市内の祖父母世代が保育を担う。親世代は安心して仕事に打ち込める。子どもの遊び場は豊かな森。継続的な植樹によって獣害で荒れた山は緑に。海沿いにリニア新幹線が走り、近未来の技術が自然に溶け込んでいる。
大野市の五番通り沿いの旧黒原書店が、大学のサテライトキャンパスとして生まれ変わる。周辺の空き家は学生のシェアハウスに。同書店向かいの空きビル1階は大野の名水を使った地ビールの醸造所、上階はシェアオフィス。通りは常に若者が行き交う。
河口の水位が低い日、特殊堤は電動で倒れて水辺空間が広がる。ウッドデッキにカフェ、県道沿いには蔵を改修した店が並び、住民と観光客が会話を楽しんでいる。三国港と福井市街地をつなぐ「水上バス」が通勤や観光の足として活躍している。

関連記事
あわせて読みたい