社員が野菜を収穫するのを笑顔で見守る高野利明さん=福井県鯖江市莇生田町

 まさに実りある社員教育—。福井県鯖江市莇生田町の漆器木地・木製雑貨製造業「ヤマト工芸」は、社員教育に野菜栽培を取り入れている。ものづくりの精神を培うだけでなく、地域や環境への関心を高めてほしいとの願いからで、同社の文化として根付き始めている。

 ヤマト工芸は7、8年前からものづくりの技術継承と鯖江市河和田地区の活性化につなげたいと若者を積極的に採用。現在、49人の社員のうち20〜30歳代が約30人を占める。そのうち8人は県外者で、伝統工芸をなりわいとしたい都市部の若者にも活躍の場を提供している。

 社員教育に野菜栽培を取り入れたのは昨年秋だった。「野菜作りも仕事と一緒。計画を立て、環境を整えれば良い収穫がある」と社長の高野利明さん(69)。木材を扱う仕事で、同じ自然を相手にする野菜栽培が社員教育に有効と考えた。「野菜を食べて健康で長く働いてほしいし、都市部出身の社員には地元の自然に親しんでほしい」との願いもあった。

 自らの畑に社員1人1坪ずつスペースを提供。用意した野菜の苗や種を選んでもらい、高野さんの指導を基に栽培に取り組む。今年は社員25人が4月に種まきや苗植えを行い、昼休みの時間を利用して2週間に1回のペースで間引きなどの農作業に汗を流してきた。6月に入ってブロッコリーやキャベツなどが実り、収穫を楽しんだ。

 昨年3月に入社し人生初の野菜栽培に取り組んだ大阪市出身の中山結子さん(31)は「トマトは苦手だったけど自分が育てたものはおいしかった。これが本当の野菜の味だと感じた」と感激の様子。「手をかけるほど上手に育つ。失敗しても勉強になる」と充実感を漂わせる。

 「社員としてだけでなく、野菜栽培を通して地域や自然と人間のつながりを感じてほしい」と高野さん。「人づくりがまちづくりにつながる」と信じる。社員には人生を謳歌(おうか)できる生き方をしてほしいと願い、「若いうちは仕事や遊びに忙しいだろうから、野菜栽培があまり社員の負担にならないようにしたい」と笑う。

関連記事
あわせて読みたい