当日までどんな食材が集まるか分からなかったにも関わらず、次々と料理が完成していきました

車1台では収まりきらないほどの食材を、当日集まったスタッフがまたたく間においしい料理に仕上げました

「合掌!いただきます!」「いただきます!」 87人全員が手を合わせて大合唱

 「合掌!いただきます!」「いただきます!」

 どこか、懐かしい響きすら覚える人もいるかもしれません。みなさん、最近「いただきます」を言いましたか。誰かと一緒に、食卓を囲んでいますか?

 こんにちは、初めまして。やりたいことをどんどん形にし、福井を盛り上げる「ゆるパブ」メンバーで、ゆるい移住参加者の森一貴です。本日は私から、5月28日に福井県鯖江市のアイアイ鯖江にて開催された「ゆるい食堂」について紹介します。

 ゆるい食堂は、余った食材を集め、作った料理を無料で提供するイベント。主には子どもたち向けに、食の「おいしさ」や「楽しさ」を感じてもらおうという意図が込められています。当日はスタッフ・参加者含めて87人が集まり、全員で手を合わせ、「いただきます」を響かせました。

 料理がおいしいのはもちろん、オリジナルキャラクター「お米の神様」が登場し、スイーツを賭けたじゃんけん大会が開催されるなど、子どもたちは大はしゃぎ。そこにあったのは、正に「ゆるい」空間でした。

 でも、ゆるい食堂は単に「ゆるく楽しんでもらう」ためだけに開催されたわけではありません。そのゆるさの背後には、3つの問題意識がありました。

 まずひとつ目は、満足な食事を取れない子どもがいることです。

 福井県の平成25年度の就学援助率は7.3%(※1)。就学援助は、貧困等のため、教科書等を買えない家庭のための支援制度のことです。7.3%ということは、100人いれば約7人は就学援助を受けているということ。県内のある学校では、生徒の一日の食事が給食だけという家庭もあり、職員がおにぎりを作ってきて食べさせていることもあるそうです。加えて、現代では「孤食」も問題になっています。2004年の小学生の孤食率は、日本全国で10.9%(※2)。小学生の10人に1人は、1人で夕食をとっているのです。

 次に鯖江市内にも、捨てられてしまう食材があるということ。

 実は、まだ食べられるにも関わらず捨てられてしまう食材が、鯖江市内でも本当にたくさん存在するのです。その理由は様々ですが、例えばある商品のパッケージを変更した場合、以前のパッケージの商品は廃棄の対象になります。あるいは、農産物が大きく成長しすぎてしまって規格におさまらないとか、加工食品が製造途中で潰れてしまった、といったことも廃棄の理由になります。まだ食べ物としては全然食べられるのに、捨てなければならない場合があるのです。

 ならば、こうした捨てられてしまう運命にある食材をいただき、子どもたちに振る舞うことができないか、と考えたのが、そもそものゆるい食堂の発端だったのです。

 最後に大事なこととして、「福祉のイメージ」についての問題があります。

 子どもたちを支援する団体やイベントはたくさんあります。ですが、支援する側は、かわいそうな人たちがいるのだから私たちが「やらなければならない」、という義務感や使命感で支援してしまっていないでしょうか。あるいは支援を受ける側も、支援を受けながらも、肩身が狭い思いをしてしまっていないか?

 ゆるい食堂を「貧しい子どもたちのため」のイベントにすることは簡単です。でもゆるパブでは、そうした義務感で動くことは、絶対にしたくないと考えています。なぜかといえば、お互いが楽しくないのでは、やっても意味がないから。だからこそ、私たちは第一に、私たち自身が「楽しめる」イベントを作りたいと考えています。その結果生まれたのが、「お米の神様」や「じゃんけん大会」だった、というわけなのです。

 さて、そのような考えから生まれたゆるい食堂。

 その準備過程では、一体何が起こっていたのでしょうか?

 まず、食材を集めようと行動した私たちが驚いたのは、「こんなに食材は余っているのか」ということ。鯖江市のいくつかのお店から食材や漆器をご支援をいただきました。当日までに集まったのは、肉や魚、野菜や調味料など、なんと車1台では収まりきらないほどの食材。

 また当日は、趣旨に賛同してくれた調理スタッフ(長年冷蔵庫の残り物と戦ってきた歴代の猛者たち)が20人以上集まりました。当日までどんな食材が集まるか、詳細はわからなかったにも関わらず、その場で作る料理が決まり、班分けがなされ、またたく間に料理ができていきます。数時間後できあがった料理は、カレイの煮付け、豚汁、炊き込みごはんなどなど。食材費がゼロだったにも関わらず、まるで有名店の豪華バイキングのようです。

 そのあいまに参加者が集まり、最終的に集まったのは、スタッフ・参加者合計で87人。バイキング形式で好きな料理をとり、全員で手を合わせて。

 「合掌!いただきます!」「いただきます!」

 みんなでおいしい料理に舌鼓をうち、子どもたちは駆けまわり、お米の神様には、彼を慕う弟子までできました。捨てられてしまう運命にあった食材が、こんなにたくさんの笑顔を生んでいる。こんなに素晴らしいことがあるでしょうか?

 ゆるい食堂は、これを端緒としてより規模を広げ、たくさんの笑顔を作っていきたいと思っています。どうぞ、温かく見守っていただけたら嬉しいです。(ゆるパブメンバー、森一貴)

 ゆるい食堂では、食材を支援いただける方も募集しています。ご連絡はこちら「ゆるパブリック」まで。メールアドレス info@yurupub.org

※1 文部科学省:要保護及び準要保護児童生徒数(各都道府県別)【平成7〜24年度】
※2 Benesse教育研究開発センター「第1回子ども生活実態基本調査」(2004年実施)

  ×  ×  ×

 このコラムに対するみなさんのコメントをFacebookで受け付けています。

 福井の若者や学生、公務員、起業家、経営者、研究者などがゆるくつながり活動する一般社団法人ゆるパブリック(略称:ゆるパブ、2015年福井に設立)が、さまざまな視点から福井のまちの「パブリック」に迫ります。

関連記事
あわせて読みたい