今秋にメジャーデビューするロックバンドのメンバーを撮影する堀田芳香さん=東京・南青山のスタジオ

 ロック愛が高じて音楽専門誌の編集部に飛び込んだのは27歳の時。カメラとは無縁の世界から、取材活動をする中で写真の腕を磨いた。2000年に独立、海外のロックアーティストを中心に撮影を手掛け、昨年4月にはビートルズ初来日以来、49年ぶりにロックの聖地、東京・日本武道館で公演したポール・マッカートニーの歴史的ライブの代表撮影に抜てき。自ら「天職」と言い切る。

 「もっとワイルドに」「その表情いい」。5月下旬、東京・南青山のスタジオで、福井市出身のフォトグラファー堀田芳香さん(50)=東京在住=が楽しむようにテンポ良くシャッターを押す。秋にメジャーデビューするロックバンドのプロモーション用写真の撮影。乗りの良い声につられるように、初めは硬さのあったメンバー5人の表情が、見違えたように生き生きとしてくる。

 中学、高校、大学とバンドでドラムやギターを担当するなど根っからのロック好き。IT企業のSEを経て英語のインタビュアー兼編集者として1993年に音楽専門誌「プレイヤー」に入った。

 初めは、全く写真に興味がなかった。先輩編集者に撮り方を教わりインタビューと撮影を同時にこなしているうち「海外の通信社から借りた写真を見て、このカメラマンいいなとか。気付いたら大好きなミュージシャンを文字より写真として残したいという気持ちが強くなった」。

 米国のロックアーティスト写真の第一人者、ニール・ズロゾワー氏と仕事を通して知り合い、ロサンゼルスのスタジオにも足を運んだ。「好きになると何でもバーって行っちゃうタイプ」。フィルムを使っていたころは、風呂をつぶしてプリントしていたといい「入浴は週1回くらいでした」と笑う。

 写真一本でやっていきたいと34歳で独立した。堀田さんと20年来の付き合いがあるビクターエンタテインメントの西内慎司さんは「アーティストの表情など、こちらが意図した以上のものを引き出してくれる。女性らしい柔らかさと、硬派な部分を被写体に合わせて見事に撮り分けてくれる」と信頼を寄せる。

 プレイヤー時代に培った音楽業界の人脈を頼って撮影を続ける中で「バンドの写真なら堀田」と評価を高めた。メタリカ、ガンズ・アンド・ローゼズ、マドンナ、レディー・ガガら洋楽アーティストのライブ写真を中心に、氣志團やAKB48の「GIVE ME FIVE!」といったCDジャケット写真まで多くを手掛けた。

 父親の仕事の関係でアメリカで暮らした中学時代に、ラジオで曲を聴いて以来、とりこになったポール・マッカートニーの来日公演撮影はレコード会社から声がかかった。「ポールのすてきな笑顔や日本のファンに対する温かい気持ちを知っているから、シャッターを押した瞬間に最高の写真が撮れたことが分かった」と振り返る。

 日本のバンド「ラウドネス」のギタリスト高崎晃さんから最近、「君の写真には愛がある」と言われた。「私のは芸術じゃなく、目的がある写真。被写体の一番いい見せ方を本人と一緒につくっていけるのが魅力」と力を込める。「以前はだた格好良く撮りたいと思っていたけれど、今は被写体に対してどれだけ愛を注げるかが大事なんだと感じている」

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