【越山若水】この間まで「チビ」だの「老いぼれ」だのとののしり合っていた2人が握手している。いまにも戦争を始めそうだった険悪さは見られない。変われば変わるものだ▼何をしでかすか分からないトランプ氏と、若き暴君と見られてきた金正恩氏。この2人によって歴史的な米朝首脳会談が実現したことそのものが不思議である▼このまま朝鮮戦争の終結という偉業を達成するかもしれない。歴代の指導者が成し得なかったことを、この2人が…。政治学者の姜尚中(カンサンジュン)さんも複雑だったらしい▼「歴史の狡知(こうち)」としか言いようがない、と週刊誌に書いていた。同感の半面、けがの功名とも思う。たとえは悪いけれど、子どもの口げんかは立場が対等であるほど派手だから▼北朝鮮が何より望んできたのが米国との対等な立場。遠慮のないトランプ流は意外に好都合だったのかもしれない。もっとも肝心なのは成果。だが合意文書は曖昧で解釈に困る▼特に解決が急がれる拉致問題である。トランプ氏は提起したというものの、金氏がどう受け答えしたのか分からない。もどかしさが募るばかりだ▼非核化に向けて具体的な道筋を付けたのか、それもはっきりしない。残念ながら、成果が目に見えるようになるのはまだ先らしい。となると、また心配のタネが出てくる。両首脳が心変わりしないか、と。歴史の狡知は計り知れない。

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