休耕田にコウゾを植え終えたセーブ・ザ・コウゾ・プロジェクトのメンバー=4月3日、福井県池田町魚見(長谷川浩さん撮影)

 越前和紙の原料であるコウゾ栽培の再興を目指すプロジェクトが福井県池田町で始動した。かつては越前市の和紙の産地周辺で作付けされていたが、現在では国産品を手に入れるのも難しい。地元の和紙造形作家の計画に賛同者が集まり、4月末までに同町内に苗木300本を植えた。収穫は11月ごろ。国連教育科学文化機関(ユネスコ)無形文化遺産への追加登録を目指す追い風にしたいと、産地から期待を集めている。

 この作家は同市の加藤志津子さん(65)。紙をすくのと同じプロセスを踏んで作品を制作しており、素材から手掛けたいとの思いが強くあった。交友のある彫刻家で、池田町魚見の棚田の保全活動を進める長谷川浩さん(47)にも勧められ、同地で栽培することを決心。「セーブ・ザ・コウゾ・プロジェクト」と銘打ち、賛同者を募った。

 栽培ノウハウはすでに失われていたが、元県総合グリーンセンター樹木医の今井三千穂(みちほ)さん(岐阜県)がアドバイス役となり、昨秋から準備。4月初め、15人で高知県産の苗木200本を棚田の休耕田に植え付けた。同下旬には茨城県産100本も追加した。

 越前和紙産地では昭和初期まで、池田町や鯖江市でコウゾが盛んに栽培され、製紙所に納められた。現在は主に卒業証書用に5、6軒が生産するのみとなっている。

 日本特産農産物協会によると、国内のコウゾ生産量は1965年度は3170トンだったが、2012年度には69トンに縮小した。先に無形文化遺産登録された石州半紙(島根県)、本美濃紙(岐阜県)、細川紙(埼玉県)の3産地で囲い込む動きが加速しており、県和紙工業協同組合の石川浩理事長(54)は「越前和紙産地では国産は極めて手に入りづらい」と現状を語る。

 県と同組合は昨年度、新規のコウゾ栽培の振興策を打ち出した。プロジェクトの苗木代は県の補助金などを活用。収穫したコウゾは同組合が買い取ることになっている。

 また、池田町には自生化したコウゾがあることも分かり、プロジェクトメンバーは純県産コウゾ再生の夢も膨らませる。石川理事長は「栽培者が増えて地産地消が進み、ユネスコの追加登録への機運が高まれば」と期待。加藤さんは「人間国宝に使ってもらえるような質の高いコウゾを目指す」と意気込んでいる。

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