フルードが開催したセミナー。ひとり親同士が悩みを打ち明けた=3月、福井市のアオッサ

 子どもが1歳になる前に、夫婦の別居が始まった。所得に応じて、ひとり親に支給される児童扶養手当は該当せず、保育料も高額のまま。「これから子どもとどうやって…」。木村真佐枝さん(43)=福井県坂井市=は、先が見えなかった当時を振り返る。

 公園で遊ぶときは、知り合いに会わないように車で遠くへ行った。保育園の送り迎えは時間をずらした。携帯電話で友達との連絡もやめた。どんどんふさぎ込んだ。

 別居は3年ほど続き、2012年に離婚。近所の会社で事務のパートをしていたが、収入は限られた。正社員になれば土日出勤、夜10時までのシフト制に組み込まれる。結局、離婚直前に仕事を辞めた。

   ■  ■  ■

 厚生労働省によると、平均的な所得の半分を下回る世帯で暮らす子ども(18歳未満)の割合は12年時点で16・3%と過去最悪を更新したが、ひとり親家庭は54・6%と大きくはね上がる。

 福井県の離婚件数は03年の1470件をピークに減少傾向にある。しかし児童扶養手当の受給者は、15年前の約1・8倍の5633人(14年度)に上り、貧困は広がっている可能性がある。

 県内のある40代のシングルマザーは、別居後に工場で働き始め、休日はアルバイトをした。それでも家計は赤字で、なけなしの貯金を切り崩した。「きょう生きていたら100点と思って生活していた」。同居する子どもは応援してくれたが、接する時間は極端に減った。ふとつぶやく「お母さんのせいで…」という言葉がつらかった。

 起業を目指していた別のシングルマザーは、県外出張が多く、小学生の子どもには実家で食事を取らせた。でも夜になると、アパートに戻り一人で眠っていた。結局2年間不登校になり、自分も子どもも精神科に通った。悩みは誰にも打ち明けられなかった。

   ■  ■  ■

 14年、木村さんはシングルマザーたちが運営する県外のNPO法人のセミナーに参加した。悩みを話したら「分かるよ」と理解してくれた。みんな明るかった。

 「いろんな人に出会い、前向きに生きることを学んだ」という木村さんは現在、福祉関係の仕事に就いている。ひとり親を支援する任意団体「フルード」も立ち上げ、定期的にセミナーや講演会を開催。4月24日と5月29日には福井市で「シングルマザー・グループ相談会」を開く。

 国が人口減対策の一環として、女性活躍社会を掲げる中、ひとり親家庭に焦点を当てた移住政策も出始めた。

 島根県浜田市は15年度から、市内の介護施設で働くことを条件に支援を実施。養育費や家賃の補助、中古自動車の無償提供、一時金支給などを行っている。現在は東京、愛知、大阪などから7世帯が住んでいる。

 離婚や別居の理由はさまざまだ。しかし複数のシングルマザーは「ひとり親になったのは自己責任という風潮を感じる」「幸福度日本一ばかりが強調され、声を上げにくいという生きづらさがある」と打ち明け「ひとり親を含めた多様な生き方を認めてこそ、幸福な社会が実現するのでは」と訴える。

関連記事
あわせて読みたい